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2022年11月09日

<エルピス—希望、あるいは災い—>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<エルピス—希望、あるいは災い—>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー


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「真犯人は野放しになっている」——、拓朗(眞栄田郷敦)の言葉がまるで何かの合図だったかのように、行方不明になっていた中学2年生の女子生徒が遺体で発見される。首には、かつて世間を騒がせた連続殺人事件の被害者と同じく絞められた痕があり、遺体発見現場も同じ神奈川県八頭尾山の山中。これは偶然か、それとも——。

当時犯人として逮捕・起訴された、松本良夫死刑囚(片岡正二郎)の冤罪を訴えていた拓朗の言葉に、わずかな可能性を見た恵那(長澤まさみ)は、番組で過去の事件を調査報道したいと考える。しかし、プロデューサーの村井(岡部たかし)に取り合ってもらえるはずもなく、恵那はひとまず、一人で事件を洗い直すことに。そして、当時14歳で、逮捕当日に松本の家で保護されたヘアメイクのチェリーこと大山さくら(三浦透子)が書きためた裁判記録をもとに、松本が殺人を犯したとされる日の足取りを確認すると、検察側のある主張に違和感を覚える。

一方、事の重大さに気づき、一度は真相究明から手を引いた拓朗だったが、恵那が本格的に動き出したことを知り、自分も手伝いたいと申し出る。中途半端な覚悟に呆れつつも、とりあえず戦力として拓朗の力を借りることにした恵那。するとその矢先、担当弁護士の木村卓(六角精児)を通して面会を申し込んでいた松本死刑囚本人から、恵那宛てに手紙が届く。さらに、思いもよらない人物から1本の電話がかかってきて…。

第2話のレビュー

松本良夫(片岡正二郎)は無実であり、女子連続殺人事件の真犯人は別にいる。この物語の主軸はその点にあるのだが、もう一点、考えたいポイントがある。恵那(長澤まさみ)の余命についてだ。

1話の時点で、彼女の体調が悪いらしいことは十分に描かれていた。繰り返される嘔吐、必死に水を飲み込む様子、人間にとっての生命維持活動である「食べる」「寝る」が上手くできなくなっている側面など。

筆者はこの点を、これまで何事かに違和感を覚えてもやり過ごしてきた恵那が、「おかしいことはおかしいと言う」と覚悟を決めた心情の表れであり、一種のメタファーだと論じた。

しかし、おそらく違う。もっと切羽詰まった具体的な、命を脅かす病が関係している可能性がある。その理由のひとつに、斎藤正一(鈴木亮平)が挙げられる。

恵那は若くして報道番組のサブキャスターとなり、期待の大型新人と目されていた。しかし、スキャンダルのせいで降板。低視聴率の深夜バラエティを担当することになった。

この、いわば熱愛スキャンダルの相手が斎藤である。路上キスの写真を撮られたこと、恵那から斎藤に別れを告げたことなどは、1話の時点で明かされていた。この別れの理由に違和感があるのだ。

普通なら、スキャンダルの原因となった写真のせいで、関係を続けることが難しくなったと考えるのが妥当ではないだろうか?

それを、わざわざ「恵那が斎藤をフった」と名言しているということは、恵那の側になんらかの「のっぴきならない理由」があったとするのが自然である。

そして、彼女がそう長くは生きられない病であると仮定すれば、恵那と斎藤の破局にも納得がいく。病を隠したい、余計な心配をかけたくないと考え、恵那は詳しい理由を告げずに身をひいたのではないだろうか。

無視できないポイントとして、1話で恵那自身が言っていた「でないともう、死ぬし、私」のセリフもある。

このまま素知らぬ顔をしていたら、報道を担っていた身として精神が持たない……といった意味の比喩とも受け取れるが、文字通りの意味だとしたら?

それに、彼女は長い期間を費やして断捨離をしている。ベッドやソファなど大きな家具もなく、広い部屋には最低限のものだけ。引越しを予定している様子もない。将来を見越して身辺整理をしているのかもしれない。

しばらく行方不明と報道されていた少女・中村優香が遺体で発見された、新たな事件も気になる。恵那の体調には関連しない部分だろうが、彼女は物語の序盤から少女の事件を気にしている様子だった。

岸本(眞栄田郷敦)から冤罪事件の真相究明について持ちかけられた直後からだが、果たしてこの時点で少女についての報道が、そこまで気になるものだろうか?

すべて、余命が短いと自覚している人間が、「最後くらいは」と誠実に何かをやり遂げたいとする心の動きに通じるものを感じてしまう。

松本良夫が冤罪であることは、ますます真実味をもって視聴者にも提示される。

事件当時、彼はどのように過ごしていたのか。逮捕された瞬間や、取調べの様子なども丁寧に描かれた。恵那と松本は、担当弁護士・木村(六角精児)を通して手紙のやりとりをするまでに。

そこには「私は絶対に、娘さんたちを殺めたりなどしておりません」と切実な思いが綴られていた。

遺体遺棄現場の近くで、20代のロン毛男が目撃された情報があったにも関わらず、松本の件が出た途端に方針転換をした警察とマスコミ。

1話から徹底して、警察の「冤罪」や「死刑」に対する姿勢、そしてマスコミの報道体制に疑問を投げかけている本作。原発や東京オリンピックなど、見ているこちらがヒヤヒヤするような描写も多い。

しかし、私たちは、いや私たちこそ、目を背けてはいけない。

きっとこのドラマが放送に至った背景には、多くの時間と労力が隠れている。

受け手である私たちにできることは何か。まずはそれを考えることが、「おかしいことはおかしいと言う」の第一歩になるのではないだろうか。

※この記事は「エルピス—希望、あるいは災い—」の各話を1つにまとめたものです。

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