<舞いあがれ!・結婚編>18週目~21週目の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第84回のレビュー
面倒な親のせいで破談になるケースは物語において珍しくありません。が、破談が親のせいではないとするケースは珍しいのではないでしょうか。いや、まあ、一方の親(八神圭子〈羽野晶紀〉)のせいなのですが……、彼女が責めた定職につかない片親・佳晴(松尾諭)は悪くないと娘・久留美(山下美月)は考え、改めてやり直そうとする八神蓮太郎(中川大輔)に結婚はなかったことにしてほしいと頼みます。
蓮太郎が「お父さんさえちゃんとしてくれたら」とか「いまのままやったら不幸」「僕が助けてあげたい」と言うことに久留美は反発します。
私の大事なお父ちゃんやねん
20年近く定職につかず、久留美は経済的に苦労してきたにもかかわらず、(いまも貯金が1年で5万円だとか)「いまでも十分幸せやで」という久留美。蓮太郎が、母を説得するため、佳晴にいい就職先を紹介したにもかかわらず、そこに就職しなくてもいいとまで言うのです。
どちらかというと、久留美のほうが朝ドラヒロイン的かもしれません。少なくとも昭和の朝ドラヒロインはこんな感じではないでしょうか。苦労して苦労してでも運命を受け入れて……みたいな。
いやでも昭和のヒロインは、苦労して、お金もちで人の好さそうな人と結婚したら、姑がきつい人でいびられるということがよくあるので、もし蓮太郎と結婚したら、あのお母さんに苦労させられるに決まっているので、お断りしてよかったといえるでしょう。
もしかしたら、あのお母さんがやばいと判断してお断りしたのかもしれません。久留美は、苦労してきた分、これ以上の不幸を避ける選択眼をもっているのかも……。
などと心の整理をつけようとしましたが、4年もつきあっていて、親の話を全然してないふたりが謎であります。八神家なんて、あの母だったら、まず、久留美を紹介しないといけない気がしますし、あの母だから、蓮太郎が紹介したくない気持ちもわからないではありません。問題を先送りしたすえ、こんなことになったとも考えられます。そこも踏まえると、やっぱり蓮太郎との結婚はあまり良いことにならないから、結婚する前に気づいてよかったということになります。
「僕が助けてあげたい」と言いながら、なぜ、プロポーズがノーサイドだったのだろう。ちょっと高級なお店で喜ばせてあげたいと思わなかったのか、ノーサイドが久留美の好きな場所だと思っていたら、父のせいで不幸になっているとは思わないのではないか。八神に一貫性がないことにもやもやします。セットの都合という事務的な理由があったとしたらそれに説得力をもたせてほしいのです。
子供の気持ち、勝手に決めつけたらあかんで
自身を久留美にとって「呪い」と言う佳晴を窘めた、うめづの勝(山口智充)の言葉のように、決めつけずにもっと考えてみましょう。
どこか不幸そうな子が好みというひとはいます。出会いの頃、食べ物をやたら差し入れていたのも、同情だったのでしょうか。ノーサイドを選んだのも、自身の広い心ではなく、久留美に合わせてあげている自分の優しさに満足していたのかもしれません。
ただ、久留美も久留美で、いまのお父さんでもいい、このお父さんを大事にしたいと思っていたとしても、結婚相手の希望も聞いて、お父さんの就職先を紹介してもらうくらいはいい気がしますよね。だってお父さんはこれまでも定職につかず、何をしたいかわからないのだから、一回、いい会社に入ってみるのも経験でしょう。
久留美にとっての幸せな結婚相手とは、いまのお父ちゃん込みで受け入れてくれる人なのでしょう。はたしてそういう人は現れるでしょうか。
佳晴 という名前だから望月家も晴れてほしいものです。
【朝ドラ辞典 呪い(のろい)】
呪いという言葉がドラマで流行ったのは朝ドラきっかけではない。「逃げるは恥だが役に立つ」(16年)がきっかけ。いまや、自分を縛ることをなにかと「呪い」というすっかり紋切り型の表現となった。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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