<ブギウギ・大阪編>1週~5週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第20回のレビュー
白壁の家と呼ばれる次郎丸家の法事に出ることになったスズ子(趣里)は、六郎(黒崎煌代)と連れ立って香川にやってきます。ツヤ(水川あさみ)の実家ではみんな孫を別け隔てなく歓迎しますが、どちらかといえば、スズ子に親しげに接しているような印象。でもそれは六郎がややコミュニケーションが得意ではなく独特のリアクションだからとも言えます。
小学校以来の田舎。父母もいない中でよく親戚と親しげに振る舞えるなあと思ってしまいますが、そこがスズ子のあっけらかんとしたところでしょうか。
ちらし寿司を食べながら、ツヤと梅吉(柳葉敏郎)の過去を知るスズ子たち。実は、梅吉は役者を目指していたこと、ツヤが梅吉が好きで、追いかけて上京したこと……。
ツヤと梅吉が不在だからこそ知る真実。それはふたりから聞かされていたことと逆でありました。
「逆や、逆」
ほかにも、思い込んでいたことと逆なことがあることを、スズ子はこのとき、思いもよりません。
何も知らずにスズ子は、六郎が、彼とスズ子がほんとうのきょうだいではないことを蒸し返そうとするたび、必死に話題を変えます。親戚の人々も何やら微妙な空気。微笑ましいドタバタ展開ですが、本質的には、笑えない、切実な話であるのですが……。
そして、法事の日。
白壁の次郎丸家はとても大きい(ツヤの実家もそれなりに大きい家でした)。
当主の次郎丸(石倉三郎)は酔って、スズ子に踊ってくれないかと言いだします。スターにそんなこと言うのは失礼と咎められると、お金なら払うと言い出し……。酔っているからとはいえ、お金を払えばいいという考えや、踊らせたり御酌させたりと、現代ならハラスメント扱いされるようなことであります。
でもスズ子は、そこにカチンとはならず、にこにこと「金毘羅船々」を歌い踊り、みんなを盛り上げます。
興が乗った次郎丸は、真実を口にして、スズ子は愕然。
実は、スズ子は、次郎丸家の子であるという衝撃の(視聴者はすでに察している)真実!
このとき、六郎が、次郎丸の家にたくさんの動物がいることを喜んで、うさぎを抱えてきたりして、そのうち、数羽の鶏を座敷に放って、場が混乱するなかでスズ子が真実を知るという流れになっています。
スズ子の驚きや混乱を、宴会場と化した法事と、鶏たちの乱入の狂乱で表しています。ただただ、筋を進めるのではなく、その出来事に合った何かを起こすところがよくできた脚本であります。筋とセリフだけでは面白くない。身体感覚にアプローチしていくことが肝要です。
ツヤの母・トシを演じている三林京子さんは、「スカーレット」で、
貴美子(戸田恵梨香)が大阪に働きに出たとき、家政婦の先輩として厳しくあたたかく教えてくれた大久保さんで絶大な支持を得ました。
三林さんは大阪出身なので、大阪弁も自然で、大阪の人のたくましさが感じられます。今回は、職業婦人ではなく、家の女当主として、どっしり構える、前作「らんまん」の松坂慶子さん的な雰囲気で、大久保さんとはまた違う雰囲気です。どんな役でも三林さんが演じると安心感があり、魅力的です。真実を話そうとする次郎丸の耳を掴む動きとか最高でした。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
「ブギウギ」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK