<らんまん・東京編>6週~10週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第29回のレビュー
万太郎(神木隆之介)は長屋の差配・江口りん(安藤玉恵)から部屋が空いていると聞いて、クサ長屋に住むことを決めます。差配とは”所有主に代わって貸家や貸地などを管理する”仕事。現代だと管理人。不動産屋さんが兼務していることもありますね。
りんから「クサ長屋」は実は「十徳長屋」という正式名称があることを聞いた万太郎は、ドクダミも「十薬」(10の病に効く)とも呼ばれていると、その重なりを喜びます。
そして、長屋の人たちと一緒にドクダミを摘んで、いろいろなことに利用することにします。
ドクダミに陽が当たってキラキラして見えます。
長屋の人たちも、東大生、落語家……等々、さまざまな個性があります。
万太郎がみんなに竹雄を紹介するとき「井上竹雄」と紹介しました。井上という苗字があったんですね。明治8年に「苗字必称義務令」が出て誰もが苗字を名乗ることが義務付けられました。
自由といいながら、義務。苗字を名乗らない自由は奪われたわけです。自由と平等は統一すればいいってものじゃない気もしますが、何かを得れば何かを失うことの一例でしょう。
一見、地味で無価値に見えても、使いようがある。万太郎が来て、みるみる明るくなった長屋を苦々しく見る倉木(大東駿介)。
この長屋の入り口の手前に「じごくや」という店があります。地獄を通った先の長屋ですから、相当、悲惨な場所というイメージがわいてきます。
倉木のもとに万太郎が100円を払いに訪ねます。
長屋の家賃は1部屋50銭。二部屋で1円。これで「100円」の価値がわかりますね。自然な流れです。
「盗まれたもんはありません」と言い、倉木のやったことを水に流そうとする万太郎に倉木は「ほどこし」だと猛反発します。
「誰の目にも入らねえ 入ったとて疎まれ踏みにじられ、踏みにじったことを誰も覚えてない」と植物のことを言いつつ、たぶん、自身を卑下している倉木に、「雑草ゆう草はないき」と力説する万太郎。
名言出ました。「どの草花にも必ずそこで生きる理由がある。この世に咲く意味がある」
SDGsの理念「誰も取り残されない社会」に沿ったテーマ性がびしびし伝わってきます。
言ってることはもっともで、脚本の構成もじつに見事ですが、スローガンをひたすら連呼する選挙演説のような印象も拭えないように感じていたところ、その心配はなくなりました。
ラストに竹雄が、「峰屋は若の財布じゃない」と万太郎を厳しく嗜めるのです。
それを何度も復唱させられる万太郎。
この愉快な場面でバランスがとれました。すばらしい。
こうやってバランスをとりながら、ほんとうに大切なことは繰り返し繰り返し言葉で伝えるべきなのです。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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