<らんまん・植物学者編>16週~20週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第87回のレビュー
文部大臣・森有礼(橋本さとし)に気に入られた田邊(要潤)は、女子学校の校長になり、さらに帝国大学(東京大学から改名)の理学部の教頭にもなり、順中満帆です。廊下をすれ違う、田邊と、かつて調子に乗っていた美作(山本浩司)との差異。
外には桜が咲いていて、窓から花びらが入ってきます。春の嵐という感じでしょうか。
桜つながりで、万太郎(神木隆之介)の家では寿恵子(浜辺美波)が桜飯を作ります。タコを混ぜて炊くことで、ごはんがふっくら赤く染まり、桜のようだという風情あるお料理。寿恵子の母・マツ(牧瀬里穂)が「なんだかいいことありそうだろう」と作ってくれたと、寿恵子は万太郎を励まします。「大丈夫です」と。
論文を、田邊との共著の形にして、田邊の功績を記し、図鑑を刷り直しました。
でも、花がはらりと散る。
田邊は許さないと頑なで……。
憔悴しながら万太郎は田邊の家に直接謝罪に向かいますが、やっぱり冷たくあしらわれてしまいます。
万太郎「わしはなんちゃあ持っちょりません 身分も地位も ただ好きゆう思いだけですき」
田邊「だから植物から愛される? フッ。すごいな君は どこまでも私を傷つけてくる」
こうして、田邊は、大学でも植物図鑑を作ることにしたので、部外者には大学の資料を見せないと万太郎に門戸をぴしゃりと閉ざします。
キツイ……。これ以上のひどい仕打ちはなかなかないでしょう。
田邊は田邊で、好きなことだけやっていられる万太郎がうらやましいのではないでしょうか。田邊は自分の美学を護るために、いろいろなことを犠牲にしてきているはずで、いやな思いもたくさんしてきているのに、万太郎は、面倒なことはやらずに済んで、好きなことだけに邁進しているのですから。
従来なら、万太郎の邪魔をする悪役になりそうなところ、田邊にも一理あると思わせます。万太郎が、どこまでも、抑制していて、田邊の前で、大声をあげたり、泣いたりわめいたりしないことによって、万太郎が被害者に見えにくい。むしろ、淡々としていて、自分が悪いとは思っていないようにすら見えてしまいます。
たぶん、意識的にこういうふうにしているのだろうと推測します。ここで、万太郎が泣いてすがったりして、かわいそうな被害者に見えてしまったら、意図が台無し。ここでは、あくまでも、万太郎にも、田邊にも、理があると見せて、視聴者に思考を促しているのでしょう。
田邊は「私の魂は自由になった」とご満悦。
出会う人を縛っていた鎖を解き放つ力のある万太郎。期せずして田邊の鎖を断ち切ったことは万太郎にとって大きな痛手となったのです。
いや、でも、モデルの人物の行く末を知っていると、なんともいたたまれないんですけどね……。だからこそ、ここまで、万太郎を追い込むことも可能なのでしょう。結末が描かれてからでないと、なんともジャッジできません。いまはただ、ドラマを見ながら心揺らす。それがエンタメの醍醐味です。
「万太郎さんは終わらない。終わるもんですか」と励ます寿恵子も、かわいい園子もいて、庭には花(ヒメスミレ)も咲いています。
「どんなときでも花は咲いちゅう」と鼓舞する万太郎を応援する視聴者も、田邊に心を寄せる視聴者もいるだろうという、広がりのある物語になっています。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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