<らんまん・植物学者編>16週~20週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第96回のレビュー
第20週「キレンゲショウマ」(演出:深川貴志)はあっという間に3年の月日が流れます。子供はふたりになり、寿恵子(浜辺美波)のおなかのなかにはもうひとり。経済的には借金取り(六平直政)から逃げているくらいなので相当困窮していると思われますが、子供3人ってすごい。不況で出生率の低下している令和日本では信じられない生き方です。モデルの牧野富太郎家はもっと子沢山だったそうです。昔はきょうだいが7、8人いることはざらだったんですよね。
3年前の問題は、喉元すぎれば熱さ忘れるといったところか、万太郎(神木隆之介)は何事もなかったように自費出版の植物図鑑を作っています。寿恵子が「もっと欲深(よくぶか)になって」と励ましたからでしょうか。もっと欲深……、いや、ならないほうが……。
欲深と言えば田邊(要潤)。彼のはじめた東大の植物図鑑も続いていますが、田邊はほとんどタッチしていず、彼はいまやふたつの学校の校長先生を兼任しています。これこそ彼の欲深さの成果でしょう。
例の下世話な小説問題は、訴訟を起こして勝訴、沈静化したのでしょうか。あんなに騒いで、あっという間に3年後、何事もなく、むしろさらに出世しているとは……。
田邊は結局、植物図鑑をはじめたことで出世できたのか、植物図鑑はもう田邊には必要ないのか、そのへんのことは今後また描かれるのだろうと思いますが、万太郎のように熱意がある人が経済的に困窮しながら自費出版をやって、どうやらまだあまり世間からは注目もされていない様子なのに、田邊は植物図鑑を人任せにしていることは理不尽だと感じます。
才能のある万太郎を邪魔するための出版活動なんて虚しい。
ただ、その図鑑で、藤丸(前原瑞樹)が日本初の変形菌の論文を発表し、長らく留年していた大学を卒業できることになったので、まったく役に立っていないわけではないようです。
才能ある若者の道を作るきっかけになっているなら、それはそれで良い。
万太郎は、大学や博物館など権威筋からの協力は得られなくなりましたが、四国植物採集をきっかけに、ひとりではないと元気づけられたこと、丈之助(山脇辰哉)のアイデアで、新聞に、植物の名前教えますという広告を出したことで、全国の一般市民からの植物情報を得ることができるようになります。権威に頼らず民間でなんとかする。大事なことです。
そして、地図に、植物に、見つけてくれた人たちの名前を記していきます。
たぶん、この、この世界に生きる人達の存在意義を、名前を認識することで強調する。それがモデルとは違う、ドラマならではのテーマなのだと感じます。
丈之助の提案は、長屋を出るにあたっての置き土産。定職につき結婚することになった丈之助は髪も服もさっぱり。ほかの長屋の人たちも、それぞれの道を見つけ、長屋を出ていきます。
倉木(大東駿介)に万太郎が別れ際「大好きじゃ」ともったいつけて言うのは、最初の出会いは最悪だったけど……ということでしょうか。照れ屋の倉木にあえてそういう言葉を使ってさらに照れさせたいという意図かもしれません。
第19週はジョイマン高木が話題になりましたが、第20週はなすびが出てきました。運送業を営む人物役と思いますが、あまりに溶け込んでいて、見逃してしまいそうでした。高木さんも今週は静かに郵便を届けていました。これはこれで無駄遣い感がありますし、ネタをやったらやったで批判が出る。難しいものです。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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