<らんまん・植物学者編>16週~20週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第80回のレビュー
万太郎(神木隆之介)は植物採集に出張中。お供には藤丸(前原瑞樹)。なるほど、前半は、竹雄(志尊淳)がお供をしていましたが、お役御免となったため、万太郎と会話させる人物が必要で、藤丸に白羽の矢が立ったのでしょう。
現実では、ひとりでいることは往々にしてありますが、ドラマだと、独り言ばかりになってしまうため、誰か話し相手が必要になります。
相手役のほかに、手紙という小道具も役立ちます。
植物採集に出ている間、万太郎は寿恵子(浜辺美波)にせっせと手紙を書いて送ります。寿恵子もそれに返事を書き、往復書簡でふたりの会話になります。
万太郎は生まれてくる子供の名前と名付けの理由を考えてしたためます。
最初に考えついたのは「スミレ」。
この手紙の内容が出てくるまえに、寿恵子が質屋でかりんとうをもらうと、お腹の子が喜ぶという描写があったので「カリン」になるかと思いました。
スミレ、ナズナ、ユキ……次々浮かぶ、名前には万太郎の愛情がつまっています。
しかも、封筒に、その植物の絵が書いてある。
植物愛と、寿恵子と生まれてくる子への愛情が合致し、想いの度合いが深まります。
神木隆之介さんと浜辺美波さんの声は、ややささやき声だけど、言葉ははっきりしていて、聞き心地のよさと伝える力を兼ね備え、ふたりの手紙のやりとりは独特の情緒があります。
夫を待つ、生まれてくる子供を待つーーこういう待つ時間は決して無為ではなく、その間、「命」について考える有意義な時間となります。
子供の名前を考えることは、その子がかけがえのない、たったひとりの人物である認識になります。
母親に捨てられ福治(池田鉄洋)とふたりで暮らしている小春(山本花帆)は、生まれることは母と切り離されることだと言います。
「捨てられたくなかったなあ」「子はかすがいになれなかったなあって」
捨てられたくなかったという気持ちはわかりますが、かすがいになれなかった、と自責の念にとらわれるところが健気です。そんな小春を寿恵子が慰めます。ここもまた、誰もがなんらかの役に立っていることを語っているのです。不要な命などない。
そうこうしていると、夏から秋になり、寿恵子がすすきを見ていると、産気づいて……。
イカリ、シノブ、スギナ、リンドウ、レンゲ、ムラサキ、キキョウ、ハコベ……
長屋の人の助けられながらの出産と、愛にあふれた万太郎の植物の名の連呼が重なる、素敵なシーン。万太郎がその場にいなくてもちゃんと一緒にいる感じもあります。
長屋の人が活躍するのも、助け合って生きてることの現れです。出産経験のあるゆう(山谷花純)はたのもしく、小春も働きます。丈之助(山脇辰哉)は何したらいい?とうろたえ、自分で考えなと言われるパターン。このひとは勉強はできるが頭でっかちで行動がやや伴わないのでしょう。それもご愛嬌。
出産というと、どうしても苦しんだ!生まれた!喜んだ!というお決まりのコースをなぞるだけになりがちですが、とても厳かで重要な出来事であることを感じ、作り手のやさしく深いまなざしを感じました。
そこへ、万太郎が新種らしき植物を持って帰ってきます。
万太郎のつけたふたりの子の名前はーー
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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