<らんまん・植物学者編>16週~20週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第78回のレビュー
コロナ禍が収まってきたからか、演出に凝ることができるようになってきた気がします。「満開じゃ」「絶景かな 絶景かな」
日本植物誌第2巻のヤマザクラの絵を刷って天井から吊るして乾かしたものを床に寝転がって眺める
万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)。
妊娠7ヶ月でお腹の子が動き、万太郎が寿恵子の頬に口づけすると、天井の絵が風にはためきます。
それはふたりの心のざわめきのようで、すてきな場面でした。が、風に煽られて、翻弄されるふたりには、このさき、心配事も待っているようにも見えます。
第69回に次いで風の使い方が印象的でした。
競い合うことに疲れ、すっかり落ち込んでしまった藤丸(前原瑞樹)は万太郎に「助けて」とすがります。
「万さん運がいいもん。全部うまくいくもんね」とちょっとぼやきモード。これが数多いる凡人の気持ちの代弁です。
運がいい人、才能に恵まれた人にはどうしたってかないっこないのです。が、そんな藤丸は、万太郎のことは好き。同じように執着する人間でも、伊藤家の孫・孝光(落合モトキ)とは同じと思いたくないと言うのです。孝光がちょっとかわいそう。彼は彼で屈辱を味わっているのに。フラットであろうとしつつ、やっぱり主人公に重きが置かれています。当たり前ですが。伊藤家の孫を主人公にした物語だったらまた視点が違うでしょう。
万太郎は、植物と同じで「同じ人はひとりとしておらん」と言い、「徹底的に誰もおらんところを探したらええ。競い合いは生まれんき」「弱さもよう知ったら強みになる」と藤丸を励まします。
ニッチ、隙間を探すことはビジネスチャンスでもあります。でもまた、それが当たるとそこに人が押し寄せて来て奪い合う。よっぽどの第一人者にならないとあっという間に奪われますから要注意です。
という現実的なことはさておき。おゆう(山谷花純)は、逃げるのと、特性を探しにいくのは違うと前向きに考えるように藤丸を促します。
藤丸は休学し、万太郎の手伝いをしはじめます。こうして、植物図鑑の2巻が出来上がるわけですが、
そういえば、藤丸が休学した今、うさぎの世話は誰がやっているのでしょうか。藤丸は単にうさぎに弱い自分を癒してもらっているだけで、彼らの世話を責務にしていたわけではなかったのだろうか、と思うと愕然とします。植物学教室に通うのはつらいけれど、うさぎのために通い続けるという生き方もあるのではないか。こんなにやさしいドラマなのですから、きっと、うさぎの世話だけはしに来ていると信じたいです。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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