<らんまん・植物学者編>16週~20週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第97回のレビュー
寿恵子(浜辺美波)が大活躍。強面の借金とり・磯部(六平直政)を見事に攻略してしまいます。明治23年、万太郎(神木隆之介)の借金は200円に膨らんでいました。
返せるのは2円50銭。
朝ドラ鑑賞に必携、週刊朝日編「値段史年表 明治大正昭和」によりますと、
明治22年の歌舞伎座の観劇料が4円70銭。
万太郎の植物図鑑は一冊20銭。
その頃の、田邊(要潤)の給料が3000円とドラマのなかで言われてました。
再び、週刊朝日編「値段史年表 明治大正昭和」によりますと、
明治24年の都知事の給料が4000円ですから、田邊はかなりの高給取りでしょう。
万太郎のように実家が太くなければ、大学出て、あれこれ政治的な振る舞いをして出世することで
富を得ることができますが、万太郎はその道を選ばず、やりたいことのみをやるには、どうしたらいいかーー
名軍師と組むことです。
借金取りがくると、寿恵子は赤い旗を掲げ、万太郎に隠れるように合図します。
そして、寿恵子がお相手します。
強面の人物に怯むことなく、「白浪五人男」ふうに毅然と対応する寿恵子。
体を売ればいいと言われても軽くいなします。
ふつうは泣いてすがるのにと不思議がる磯部に、寿恵子は万太郎の可能性を説きます。
寿恵子は、万太郎の活動が必ずお金になると信じているのです。
そして、出資をもちかけます。
「磯部様」と丁寧に呼び、滝沢馬琴と蔦屋重三郎が組んで商売繁盛した根拠をあげ、
出資してくれれば謝辞を本に入れると言う。まったく寿恵子はできた人。
謝辞を入れるってやっぱり大事なんです。
磯部も着ているものが洒落ているし、「白浪五人男」に反応するなど、たぶん、文化芸術に理解ある人なのでしょう。
磯部が帰ったあとに、質屋の中尾(小倉久寛)にお金を返します。
ほんとうならもう流すはずの背広をまだ流さずに待ってくれていました。
質屋は、人情と商売の中間の仕事で、磯部の仕事は情け無用の徹底的に商売重視なのでしょう。
明治も23年が過ぎて、時代はますます変化しています。唐突な中尾の新聞投書によると、23年には第1回衆議院選挙が実施されています。そのときの当選者は半数以上が平民で、いよいよ平民の時代になってきているのです。武士の時代は権利や富が世襲されましたが、持たざる者だった平民が権利や富を得る可能性が出てきたのです。
世襲の財産に頼ってきた万太郎が、寿恵子と組んで商売をしていくという、日本経済の変わり目を軽妙に描きだします。
「値段史年表 明治大正昭和」によりますと、
質屋の利息は
明治20年で10円に対して27銭5厘
明治24年で25銭4厘
定期預金の利息は 東京の銀行の6ヶ月の定期で
明治20年で4分7厘
明治25年で4分3厘9毛
時代の変わり目とはいえ、まだ旧幕時代の名残のようなこともあって、22年、文部大臣・森有礼(橋本さとし)が暗殺されて、彼に頼っていた田邊に暗雲が立ち込めそうな予感……。
この説明場面、中尾が質草としてお鈴を預かり、チーンっと鳴らすのも、一難去って長屋でみんなですいかを食べて、こういう人間関係の良さを感じさせるのも巧い。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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