続・朝ドライフ

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2024年04月13日

<虎に翼 ・大学編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<虎に翼 ・大学編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】


第20回のレビュー

夜に向いている米津玄師の歌が効いてきました。突如、直言(岡部たかし)に贈賄容疑がかかり、本人はすでに勾留され、捜査令状をもった検察の日和田(堀部圭亮)が数人、部下を引き連れてやって来て、家を捜索します。

「これが猪爪家と検察との戦い。その長い日々の幕開けでした」というナレーション(尾野真千子)のあとの主題歌がいつもと違う雰囲気に聞こえました。

共亜事件のはじまりです。
この事件は、帝人事件がモデルであろうと推測されます。1934年に起こった株式売買による疑獄事件で、その影響で当時の斎藤内閣が総辞職しました。

共亜事件でも、不正な株式売買によって利益を得た政治家たちが逮捕されました。直言は銀行の理事と共に株の取引にかかわり賄賂を贈った罪に問われたのです。

理事が直道(上川周作)の仲人だったと聞くと、直言と理事との関係が深いと疑われるのも無理はなさそうです。

ドラマがはじまる前に行われた会見で、筆者はプロデューサーに、寅子のお父さんが捕まった事実はあるのか聞いたところ、お父さんの逮捕はドラマのオリジナルであると教えてもらえました。
Yahooニュースエキスパート『朝ドラ「虎に翼」は日本初の女性弁護士・三淵嘉子がモデル。史実とのバランスをどうするかCPに聞いた』

モデルのいるキャラクターのお父さんを容疑者として描くのはなかなか大胆です。でもそれによって、犯罪者にはしないだろうという想像もできます。が、先のことは流れに身を任せ、いまは、描かれていることだけ見ていきましょう。

法を学んでいるにもかかわらず、何もできず悔しい気持ちになる寅子(伊藤沙莉)
優三(仲野太賀)が「これからもつらいことがきっと起こる。でもひとつ救いなのは僕らが法を学んでいることだ」と励まします。

検察が来たとき、毅然と対応したのも優三です。家宅捜査をさせる代わりに、土足はやめてくれと人間としての尊厳を守ろうとするところはほんとうにかっこよかった。ところが、状況が落ち着いたときお腹を下してしまいます。緊張するとお腹にくるタイプなのだという描写のおかげで、あまりに深刻な話になってしまいそうなところが救われました。

もうひとりの救いは、おなじみの直道。ひとり、遅れて帰宅したり、相変わらず「僕にはわかる」と言ったり。今回、彼がわかったのは、すぐに直言が帰ってくること。もはや、直道が「わかる」と言ったことはすべて間違っていると思ってしまうので、お父さんもきっと帰ってこないだろうと覚悟ができました。

猪爪家の男性陣はどこか抜けたところがありますが、末っ子の直明(正垣湊都)だけは幼いにもかかわらず、こんな状況でもしっかりしていて、将来が楽しみです。

また、はる(石田ゆり子)もしっかりしています。弱った顔はしますが、感情をあらわにすることはなく、この状況をしっかり記録しようとします。法を学んでいなくても十分、立派な人だと感じます。検察の人に、大声を出したり、手を出したりしないですから。まあそれは年の功ということでしょうか。

これからはじまる予審の前に、弁護士を頼まないといけない。けれど、誰も弁護を引き受けてくれません。梅子(平岩紙)夫(飯田基祐)もけんもほろろ。そのときの息子の顔がまたやな感じで。なんでこんなに憎々しい人に育ったのか。

予審とは、法務省のサイトによるとこうあります。
旧刑訴法に定められていた予審制度は,公判前に,予審判事が,必要な事項を取り調べ,被告事件を公判に付するべきか否かを決める手続である。

ナレーションは「予審制度は現在ではもちろん廃止されています」と断っています。「もちろん」という言葉をわざわざつけたのはなぜなのだろうと脚本家に質問してみたい。



※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。

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第21回のレビュー

官僚や大臣たちが逮捕され日本を震撼とさせた共亜事件。取引の実務に関わったとして直言(岡部たかし)も勾留されていました。

国民から敵視される事件のため、直言の弁護人を引き受けてくれる人も現れず、寅子(伊藤沙莉)も大学に行きづらくなっていたところ、穂高(小林薫)が刑事事件は専門外ながら、直言の弁護人を引き受けようと申し出ます。
第5週「朝雨は女の腕まくり?」(演出:安藤大佑)のはじまりは不穏です。
穂高はいい人かと思えば法廷劇では男子学生のヤジを本気で止めないし、仮病を使っているようだし、本音の見えない狸親父です。たぶん、徳川家康の”狸親父”のイメージって穂高ぽい人ではないかなと想像します。つまりじつは大物なんじゃないでしょうか。

穂高を演じている小林薫さんは「カーネーション」(10年度後期)では糸子(尾野真千子)の父で、男尊女卑で家で威張ってるダメ父を演じていたとは思えない、フラットな知性を感じさせる演技です。

穂高といっしょに寅子の家にやって来た花岡(岩田剛典)は、家族同然に居座っている優三(仲野太賀)を意識しています。国民的犯罪事件を前に緊張感漂う物語が少しだけ緩みました。

また、あとで寅子が大学に復帰したとき、彼女と話すとき花岡の回りくどさを「不器用でいろいろ考えすぎちゃう人なのね。ほんとうの花岡さんは」と指摘されてしまうくだりもホッとする場面です。

穂高に促され大学に復帰した寅子ですが、また小橋(名村辰)稲垣(松川尚瑠輝)に何を言われるか……と思ったら、引きつった微笑みで迎えられます。その理由をナレーション(尾野真千子)が説明。予想どおり小橋らは悪口を言っていましたが、轟(戸塚純貴)が体を張って阻止したのです。

寅子の見ていない場面を描くとき、たとえば、昨日こんなことがあったと梅子(平岩紙)などが回想するなど、たいていは誰かの伝聞になるものです。でも、そうではなくナレーションがまるで神の目のように語ります。

ナレーションは寅子の感情もことごとく説明します。今回もよね(土居志央梨)たちがノートをとっておいてくれていたことに「じわじわ来ている寅子」などとかぶせてきます。 はて? これにはどういう意図があるのでしょうか。

客観性です。ナレーションは俯瞰して物事を見ている存在です。法律の物語なので、誰かの一人称ではなく、俯瞰して物語を見ている目線として置かれているのでしょう。裁判所にある、天秤を掲げている正義の女神かもしれません。

穂高が弁護人を引き受けてくれたにもかかわらず、直言は予審で罪を認めたため、弁護できなくなりました。
いよいよはじまる裁判の前に一時帰宅した直言は、身も心も弱りきって見えます。こういう弛緩した演技は岡部たかしさんの真骨頂。検事・日和田(堀部圭亮)に厳しく取り調べられていたので無理もありません。

でも、いわれなき罪をかぶっているのなら……。
穂高は、家族なら直言の真実にたどりつけるのではないかと、寅子に託します。
「君にしかできないことがある」と。
法を学んでいる寅子の本領が発揮されるときです。

この回、ちらっと登場した水沼淳三郎(森次晃嗣)若島武吉(古谷敏)のふたり。
クレジットに並んだふたりがSNSで注目されました。

水沼は貴族院議員で、日和田とつながっている人物。若島は逮捕された現職大臣のひとり。
森次さんは、ウルトラセブンの主人公モロボシ・ダン役、古谷さんは「ウルトラマン」のアマギ隊員かつ初代ウルトラマンの中の人(スーツアクター)で有名です。
朝ドラで「べっぴんさん」に「帰ってきたウルトラマン」の団時朗さんが出演されたこともあり、ウルトラ俳優が出るたび、盛り上がります。
地球を守る正義の人を演じたおふたりが演じる水沼と若島、はたして、いい人? 悪い人?

【朝ドラ辞典2.0 ヒーローもの俳優(ひーろーものはいゆう)】

朝ドラは国民的番組。ウルトラマンシリーズや戦隊シリーズも国民的番組。というつながりなのか、ウルトラ俳優や戦隊俳優が出演するとSNSが沸く。それだけ知名度があるということで、
ネットニュースのネタになりやすいのがメリットであろう。
年代的に、戦隊出身俳優は若手、ウルトラ俳優はシニア層の役でキャスティングされている。

※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。

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