<虎に翼 ・大学編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第18回のレビュー
法学部の面々でハイキング。轟(戸塚純貴)は「男の役目を果たすまで」と皆の荷物を率先して持っていきます。たくましい。
「男も女も関係ないだろう」と反論するよね(土居志央梨)にも今日は議論しない、と爽やか。
男も女もないと思いたいところですが、やっぱり体力差というものは厳然としてあって、寅子(伊藤沙莉)は靴擦れして歩みに遅れをとってしまいます。
花岡(岩田剛典)は紳士的に治療してくれて、なんなら背負うとまで言います。本来なら、これで、ぽっとなってしまいそうなところ、第17回で、花岡の女性に対する本心を聞いてしまったため、心は動きません。いや、プラスには動かないけれど、なんなんだ?と疑問に心は揺れます。
今日は梅子(平岩紙)のおにぎりだけではなく、涼子(桜井ユキ)も豪華なお弁当を持ってきて、男子たちは舌鼓を打ちます。
料理は女の武器という小橋(名村辰)に、花岡は法学部の女性は料理を武器にする必要はないと言います。大なり小なりなにかとぶつかりあう男女差の問題。
そうこうしていると、梅子の8歳になる息子・光三郎(石塚陸翔)に、小橋が、お父さん(飯田基祐)に妾がいるという話をして、寅子が止めに入ります。
夫の女遊びに関しての議論がはじまって、花岡の発言から「私達の学びと女遊びを同列に並べないで」と寅子は憤慨、これまで紳士的にふるまっていた花岡もついにキレはじめ、その勢いで崖から……。
最初に手を出したのは寅子でした。花岡の発言にカチンときた寅子が小突きながら反論。議論が白熱したすえ、花岡が手をかけた柵が緩んでいて、足を滑らして落ちたーー。
花岡と寅子のいる場所を引きで映した画を見れば、それほど高い場所ではないのがわかります。が、落ちた瞬間は断崖のように見える画で、こりゃ命にかかわる大事故だろーと思ってしまいます。
寅子は頭もキレますが、手も出やすい。感情のコントロールが若いときはまだうまくできないというのは、「赤毛のアン」のアンや「若草物語」のジョーのようです。たぶん、寅子が愛されるのは、こういうヒロイン像を踏襲しているからではないかという気もします。
一方、花岡は、内心、女性を見下していますが、紳士的な仮面にうまく隠しているし、怒っても声を荒げません。声のコントロールをちゃんとしているところが立派とも言えます。が、感情は乱れていて、だから落ちてしまったのでしょう。
病院に運ばれた花岡。待合室で心配している寅子たちに、梅子が離婚を考えていることを明かします。
若い頃は、良妻賢母になる自信があり、結婚し男の子を産んだものの、そこから夫は外に女性を作ってしまった(大河ドラマ「光る君へ」の詮子〈吉田羊〉みたいです)。
長男・徹太(見津賢)も父に倣って自分を見下すようになり……。梅子は自分の立場に諦めをもったことを反省し、学んで離婚し親権をとりたいと決意。でも現時点では、親権は父と法律で決まっています。
「いまはだめでも糸口を必ず見つけてみせる」と静かに強く語る梅子の状況に共感し、応援する女性視聴者はたくさんいるでしょう。
梅子は学校に来たことで、寅子たちと出会い、見下されるようなことのない、愛されるに足る人物であることを認識できたのです。
場所を変え、つきあう人を変えれば、おにぎりをふるまったり、優しい声をかけたり、自分のなかにある善を発揮して、喜びに変えることもあるのだなあと思います。
ハイキングで思った男女差。男性はズボン(あえてズボンというワードを使ってみました)で動きやすく、女性は着物やスカートで裾が気になり動きづらそう。足手まといになりかねない。よねの男装がハイキングでは機能的そうです。寅子はなぜスカートを選んだのか。現代における、山ガール的なファッションなのか。「私がいつ男になりたいと言いましたか?」という発言もありましたし、女性であることを大事にしながら、平等を求める。難易度の高い戦いなのです。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
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