<虎に翼 ・大学編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第15回のレビュー
毒饅頭殺人事件を題材にした法廷劇は、特権階級の男性の思惑による歪んだものでした。よね(土居志央梨)は「無駄な時間を過ごしただけ」とすっかり白けた気分になりますが、そこに割って入ったのははる(石田ゆり子)です。
はるがなんかしみじみいいことを言っていると、うしろで花江(森田望智)が泣いています。感動の涙ではなく、疎外感を覚えていたのです。
「戦わない女側」であることを自覚し、「優秀で強い人には私のつらさが寂しさがわからないのよ」とさめざめ。
第14回で、戦わない、戦えない人もいると寅子(伊藤沙莉)が理解を示していたようなのに、結局、戦う、戦える女と、戦わない、戦えない女は分断しているようで。
よねは、甘えて泣いて弱音を吐く花江と競べたら、寅子たちは弱音を吐かない分、存在を認めることになります。
女子部のみんなは、それぞれ恵まれているけれど辛いこともあって、でも弱音は吐かない。「愛想振りまいているからなんでも押し付けられる」というよねの寅子評が可笑しい。
花江、毒饅頭みたいな役割になっております。はるいわく、作ってみたから、いまがある、ということ。花江がいたから、意地っ張りで捻くれたよねが、寅子たちへの気持ちを少しだけ素直に言えました。
弱音を吐いてもなにも解決しないというよねに、寅子は、弱音を吐いてもいいのだと言います。弱さを受け入れる弁護士になりたいと。
そこで、みんな弱音吐き大会。
一番、印象的だったのは涼子(桜井ユキ)の「私が優秀なのは、私が努力したからなのに、誰も認めてくれない(恵まれた環境のせいにされる)」というやつ。こう思っている人、世の中にいっぱいいそう。
花江も、はるへのストレスを吐き出します。褒めてくれない。いつも砂糖を足してしまうとついに本人の前で言いました。
そこへ直道(上川周作)がやって来て、お母さんの味が故郷・丸亀の味で甘めなのだと解説。
いつもの、「わかるよ」節が、今回ばかりは場を和ませました。ゆるっとした「わかるよ」で気持ちが弛緩し、なんかいろいろ無理がある展開を救ったのです。
直道がいなかったら、ちょっと気持ちの置きどころを見失うところでした。
よねの花江への嫌悪感はわかりますが、といって、急に、花江を下げて寅子たちを持ち上げるのはどうかと思うし、これでは、なぜ、前回「戦えない人」もいると寅子が言ったのか、その言葉の価値が迷子になる。
人間、完璧じゃない。矛盾だらけであるからこそ、本音や弱音を吐き出しながら連帯していこうということなのかなと気持ちを収めようとしながらも、ともすれば、#反省会 に行きそうなところ、直道のおかげで留まることができました。彼は、別居しようと提案もするのです。
直道のふわっとした態度、お父さん直言(岡部たかし)に似ているような気がします。いわゆる男性の優位性を発揮しないで、軽く見られておきながら、大事なところは抑えている。
このドラマには、尊敬できる男性が出てこないなあと思っていたのですが(穂高〈小林薫〉も法廷劇の騒動を早々に止めなかったので株を下げた)、頼りなげに見える直言、直道、そして浪人し続けている優三(仲野太賀)こそ、尊敬できる人かもしれません。
そんな家族に育まれた寅子は心広く、よねに、好きなだけ嫌な感じでいてと受け入れます。
北風と太陽じゃないですが、寅子の鷹揚さに、よねは、カフェーの女性から聞いた、月のものが楽になるツボ三陰交を教え、寅子は生徒たちに声をかけ、みんながよねのまわりに集まってきます。
笠松まつ(うらじぬの)がセリフを発したのはこれが最後だったのでしょうか。
せっかくしゃべったのに博多大吉さんは朝ドラ受けしませんでした。
昭和10年(1935年)。女子部卒業。本科に受かったのは寅子たち5人だけと、ナレーション(尾野真千子)。でも、あの法廷劇の乱闘記事によって生徒が入学し、女子部は存続しました。荒療治といったところ。
5人は西部劇のような劇伴を背景に、戦隊もののヒーローみたいに大学に向かいます。
まだ第3週とは思えないほど話が速く進んでおります。
イケメン枠(?)の花岡(岩田剛典)はすてきな男子生徒役かと思ったら、そうでもなさそうな……。
ところで。
涼子は玉(羽瀬川なぎ)に感謝の言葉を伝えます。玉のほうがきっといろいろあるけど弱音もはかず、置かれた場所でひそかに咲いているタイプでしょう。よねはツボを教えてくれたカフェーで働く女性たちから人生をいろいろ学んでいないのか。あの場所で働いているわりに視野が狭い。でもきっとこれから成長して変化していくのでしょう。まだ第3週が終わったばかりですから。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK