<虎に翼 ・大学編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第11回のレビュー
昭和8年、1933年が十字レイアウトになっていました。そんなビジュアルからしていい感じ。
第3週「女は三界に家なし?」(演出:橋本万葉)では寅子(伊藤沙莉)が入学してから2年半、女子部の存続が危うい。じょじょに人が減っていき、入学希望者も激減で教授陣も頭を抱えています。
先輩たちは、久保田聡子(小林涼子)と中山千春(安藤輪子)しか残っていません。寅子の同期も60人から20人に減っています。
久保田はリーダー格だった人物で、中山は婚約者に振られ泣いてばかりいる人物です。泣きながら勉強は続けているから立派ですね。
なんとかすべく法廷劇「毒饅頭殺人事件」を行うことになり、寅子も協力を惜しみません。「毒饅頭殺人事件」の概要を、猪爪家が演じるモノクロトーキー映画仕立てで説明するのが面白かった。
女子たちが語らうとき、たぶん梅子(平岩紙)のおにぎりを食べているのですが、
みんなそれぞれお弁当を持ってきているのに、大きなおにぎりも食べる健啖家さんばかりなんですね。来期の「おむすび」にリンクさせているのでは……とも思ってしまうのですが。
寅子は元気、授業の合間に水泳をしています。わざわざそんな描写を入れているところが手が込んでいます。
活発に動き回る寅子でしたが、月経が重く、そんなときは学校を休みます。4日も休んでしまうほど辛いようです。月経について朝ドラで書くのは珍しい。女性のドラマですが、そこには触れることはいままでありませんでした。
脚本の吉田恵里香さんと演出の高橋万葉さんは「生理のおじさんとその娘」(23年)というドラマでもタッグを組んでいますので、その流れからの展開でしょう。
お父さん直言(岡部たかし)は、寅子が休んでいる理由を水泳や学校の活動が忙しいからとのんきに思っているのと、母はる(石田ゆり子)はいつかのことを考えて料理を習いに通ったらと言い出すのは、男性と女性の差異だなあと感じます。
月経と結婚(生殖)が結びつくのは生物学的なもので、どうにも切り離すことができず、心身ともに女性の負担になっているわけですが、意識だけでもなんとか軽減し女性が自由になることが人類の進化なのでしょう。
男女差だけではなく階級差も描きます。
法廷劇の衣裳作りに、御学友が集まりました。
「珍しいですか、庶民の家は?」と聞かれてしまう桜川涼子(桜井ユキ)。
「トラちゃんのおうちは庶民の家じゃないでしょう」と崔香淑(ハ・ヨンス)が言う理由は女中がいるからで、「女中さんのいる家なんて普通でしょう」と大庭梅子(平岩紙)が言います。
花江(森田望智)を女中と思い込んでいるのです。これは由々しき問題。
寅子としては、女学校の友人でもある花江が女中のような存在と化しているのは見逃せません。
女学校を出たら結婚するのだと、したたかに作戦を練っていた花江ですが、いざ、嫁いでみたら、姑・はる(石田ゆり子)にこき使われているような気持ちに陥っています。
花江はあんなに調子に乗っていたのになんだろうか。姑との関係なんて会った瞬間にわかるではないかという気もしないではありません。が、SNSを見ると圧倒的に花江に理解や同情、共感する声が多く、世の結婚している女性たちの想いを花江は体現しているようです。そんな花江に寅子は優しい。そこが寅子らしさなのでしょう。
確かに、テレビを見ていて、その先は危ない道と思うことは、実際の体験からではなくテレビでやっているのを見て知っていることが少なくありません。
結婚に限ったことではなく、何も知らずに夢見て向かった場所で、思いがけないことが待っていたということはあるものです。
石田ゆり子さんが姑役だってことも思いがけないことであります。
「家のことは私がやっておくから」とはるに一見優しげに言われたあとの花江の不満げな表情に落雷のような激しい音が入り、戦いを予感させる不穏な、でもあくまでコミカルな終わり方でした。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
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