<ちむどんどん・東京編(2)>51回~75回の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第56回:「未来って、日本の? それとも沖縄の?」
第12週「古酒(くーす)交差点」(演出:松園武大)は1978年4月、暢子(黒島結菜)が沖縄の実家に出した手紙からはじまりました。フォンターナに入って6年、雑誌の取材を受けるまでになった暢子。いつもはなんでもかんでも電話をかけまくってるのに急に手紙を書く心境とは……ですが、きっとこの掲載誌を送ったに違いありません。
取材記者が「暢子さん」と呼ぶのもよくわからない感覚ですが、暢子が「暢子と呼んでください」と言ったのかもしれません。苗字で呼ぶ習慣が地元でなかったという話しは以前していましたから、ブレていないといえるでしょう。
誌面でも「暢子さん」と書いてありました。どういう層を対象にした雑誌なのでしょう。恋人の有無や結婚願望を聞くし……。
下の名前で呼ぶことを「ちむどんどん」の世界的に考察すると、”個”を大事にしているということなのかなと思います。
「比嘉さん」だと、優子も賢秀も良子も歌子もみんな「比嘉さん」で”家”になりますが、下の名前はオリジナル。自分らしさがあります。沖縄は同じ苗字が多いから下の名前で区別していたと聞きますが、それも結果的に、”個”を重視する精神性につながるのではないでしょうか。
さて。暢子は「いつも自由になにものにも縛られず感じるままに生きている」と愛(飯豊まりえ)に羨ましがられます。暢子は東京に出てきて料理人としては成長しても人間性は変わらないのです。
そんな暢子にも変化が? 第12週は恋のお話になりそうです。
独立することになった智(前田公輝)が暢子と未来の話をするためのデートに誘いたいと和彦(宮沢氷魚)と愛に相談しますが、暢子が相変わらず、料理のことしか考えていなくて、智の気持ちを理解しません。愛は協力的ですが、和彦は「未来って、日本の? それとも沖縄の?」なんてとぼけた反応をします。
和彦も暢子と同じく恋には疎く(じゃあなんで愛とつきあっているのか)、暢子が食べたりしゃべったりしているところをニコニコ見ています。そのときの表情が少年時代に戻ったみたいに見えます。智が暢子をいつもロックオンしている考えていることがダダ漏れの目つきとは全然違います。暢子と和彦は子供、智は大人。
そんな和彦に、愛の父母が結婚を迫ります。ジューンブライドが流行っているから6月はどうだと畳み掛けられます。あと2ヶ月です。
それを聞いてしまった暢子はなにやら急に感情が揺さぶられて……。矢作(井之脇海)に何歳で結婚したか訊ねます。なんと19歳。
「結婚は勢い。逆に勢いがなきゃ一生できない」とぶっきらぼうに言う矢作にびっくりした視聴者も少なくないのではないでしょうか。まあ別に結婚していてもいいのですが、唐突だったので……。なんとなく、まだ料理人としてこれからという感じなので独身かなと思うではないですか。独立してから暢子との真面目な未来を考えている智と対照的です。人ってわからないものです。
暢子は24歳くらいですよね。19歳で結婚している人がいると思えば結婚を考えてもおかしくない年頃でした。
愛も、もともとは結婚する気はなく、仕事に打ち込みたかったのですが、両親の期待に応えて結婚するのだろうと思い始めていました。和彦がいますからねえ。結婚相手としては申し分なさそうですからねえ。
「変化は突然やってくる」と言う愛。矢作の「結婚は勢い」と同じ。料理一筋だった暢子にも変化が起こりそう。相手は智か、和彦か……。
その頃、賢秀(竜星涼)は、石鹸のセールスに来た女性に、養豚場で働いた給料を全部渡してしまいます。「宵越しの銭は持たない」という言葉(その日得た収入はその日のうちに使う)は江戸っ子気質と言われていますが、沖縄もそうなのでしょうか。
宵越しの銭は持たない人は実際にいるようですが、目の前で、せっかくの給料をそんなに使わない石鹸にポン!と使ってしまう賢秀を見ていると、胸に泥を詰められた気持ちになります。誰にも何も咎められず、にこにことお金を手放してしまう。賢秀は生きる辛さそのものです。沖縄の、日本の、未来が心配になります。
※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。
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