<ちむどんどん・東京編(2)>51回~75回の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第52回:労働者諸君!
暢子(黒島結菜)が土日の2日のみシェフ代行に選ばれはりきるも、同僚たちからは矢作(井之脇海)のみならず、全員、身内びいきと否定的に捉えられてしまいます。孤立する暢子をカメラがどんどん引いていくことで表現。これはよくある手法ですがうまく使っていますね。
暢子、さてどうする? と思ったところーー話は一旦、沖縄の良子(川口春奈)のターンへ。良いか悪いかは別として斬新な構成だなと感じます。暢子がどうなるか早く続きが見たいのに、違う人の話しがはじまってしまうのですから……。流行りの早送りを無意識にやってしまった?と思うほどであります。
その良子ですが、博夫(山田裕貴)が迎えに来て、うちは封建的な家で長男でと同じことを繰り返し、でも腹をくくって説得すると言いますが、良子は信用していません。
「理想主義者って案外芯が弱いんだよね」(良子)
あー、これは確かにそのとおりかもしれません。この当時、社会運動をやっていた人は単に流行に乗っていただけで、時代が変わったらすっかり思想も変わってしまっている人はたくさんいます。
理想とはそれを真実にすることに意義があるものですが、声高に語るだけのものになってしまいがち。
これを「ちむどんどん」に結びつけて考えると、比嘉家は理想(自分のほんとうにやりたいこと)を実現することを模索しています。
目下、暢子だけはお父さんにもそのままでいいと言われているので、思い通りに生きていますが、良子や歌子はそれができずに迷っています。良子の場合、夫・博夫が壁になっています。賢秀(竜星涼)も自分の好きにやっていますがうまくはいっていません。ただ、意に沿わないことはやってないので、あとはそれがうまくいくだけです。
自分の理想を貫けるか問題は和彦(宮沢氷魚)にも及びます。
暢子がシェフ代行をやっている店に和彦が愛(飯豊まりえ)と田良島(山中崇)と編集局長・笹森哲也(阪田マサノブ)の4人で訪れますが、編集局長と揉めてしまいます。新聞広告が批判されたので、それに対する意見の記事を書こうとして叱られるのです。
「議論することを止めたら新聞は」(和彦)
「俺はサラリーマンである前にひとりの人間だ」(和彦)
和彦は若き日の博夫的な理想を語ります。和彦は博夫とは違う、言うだけではなく行動が伴うでしょうか。暢子のターンに良子のターンがさし挟まった構成の意味は、博夫と和彦の対比のためでしょう。
問題になった「おいしいごはんをつくるのはお母さんの仕事」という広告は、2021年にあった、ファミマの「お母さん食堂」のネーミングにジェンダーバイアスが助長されると高校生が抗議した問題を思い出させます。ちょっと時代を先取りし過ぎ……な気もしませんが、70年代は女性問題が盛んに語られていた時代なので、こういう意見が出たこともあったかもしれません。
ここで興味深いのは、料理は女性だけが作るわけじゃないことに関して議論しているときに、暢子がシェフ代行で「この店の責任者です」と言って出てくると局長が「生意気な」と言うのです。家庭ではお母さんが料理するものと思い込んでいるけれど、社会というレストランでは男性が料理の中心になっています。矛盾ですよねえ。
※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。
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