<ちむどんどん・東京編(2)>51回~75回の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第61回:愛の気持ちを尊重するという和彦のずるさ
第13週「黒砂糖のキッス」(演出:中野亮平)は恋愛ばなしが本格化しそうな気配。サブタイトルの「キス」ではなく「キッス」に力みを感じます。和彦(宮沢氷魚)への恋を認識した暢子(黒島結菜)はすっかり仕事に身が入らなくなってしまいました。
智(前田公輝)は「つきっきりで看病してくれた」とますますやんばる行き(親に結婚報告)を進めようとします。
「つきっきり」は智の思い込みです。それほど「つきっきり」ではなく、暢子は夜、房子(原田美枝子)に呼び出されて朝まで古酒を飲んでいたわけです。しかもそこで和彦への恋を意識したことを知るよしもない智がお気の毒です。
困る暢子を見かねた二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)は”先輩”の例をあげ悶絶するような恋の悩みは仕事の原動力にするといいとアドバイスします。この”先輩”は二ツ橋自身のことであることを暢子は気づいています。
二ツ橋さんのこのわかりやすい例え話は2度目ですが、おもしろいので、コーナー化されてもいいように思うのは、高嶋さんの演技の賜物でありましょう。高嶋さんはエキセントリックな役もお似合いですが、素朴で非力な、でも懸命に生きている庶民の哀愁を演じさせたら抜群です。
二ツ橋のコントのような場面に、なぜかトランペットの音色が晴れ晴れとしているようでどこか切ない劇伴がかかるんですよね。どういう意図なのか。
もうひとり、ドラマをもり立てているのが、田良島役の山中崇さん。愛(飯豊まりえ)の悩みに助言します。田良島は混沌としたこの世界で珍しい正論を言う人物です。正論過ぎることを言って「恥ずかしい」と去っていくところまでメリハリをつけて演じています。
愛も真っ当な人物です。順調に交際していた和彦が結婚話を前に突如、様子がおかしくなったとき、あくまで冷静に話し合いをしようとします。愛の気持ちを尊重するという和彦に、自分で決めずに逃げているという彼女の主張と自身の自己矛盾への悩みはいたって当然のものです。
6年つきあって結婚をまったく考えていなかった愛と和彦。フランス好きな愛ですから、いっそ、ふたりをサルトルとボーヴォワールのような自由恋愛カップルに描いたほうが結婚を考えずに長くつきあっていることも不自然に見えずに済んだように思います。
朝ドラでそれをメインに描くのは難しいでしょうけれど、ルールに縛られない自由に着目するのなら自由恋愛もあっていいのではないか。ちょっと飛躍し過ぎでしょうか。この時代、そういう先鋭的な生き方も認めると考えるインテリカップルではあったと想像します。
飛躍過ぎといえば、フォンターナの従業員が突如3人、辞めてしまいました。
矢作(井之脇海)、桃木(池田航)、玉島(櫻井圭佑)の3人。桃木と玉島。やっと名前を認識できました。
※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。
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