<最高の教師 1年後、私は生徒に■された>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
最終話ストーリー&レビュー
最終話のストーリー
▶︎「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」の画像をすべて見る
1年前、突如与えられた2周目の人生。生徒に突き落とされた自らの死の未来を変えるため、“何でもする”覚悟を決めた九条(松岡茉優)は、ただひたすらに駆け抜けた。この世界を「変えよう」と。その思いに、これまで無自覚に人を傷つけ、無自覚に我慢をし、無自覚に見過ごしてきた3年D組の生徒たちも一人、また一人とその「本気」を解放してきた。
そして再び迎える、“あの卒業式の日”…。九条は1年前と同じ場所で、………“あの人物”と対峙する!
果たして九条の前に現れるのは誰なのか!?その「運命」の結末は!?
「変わらない」と諦める貴方へ……、九条が贈る最後の授業—— 。言葉の1つ1つを貴方に目掛けて懸命に送り出す、魂込めた最終回!!
最終話のレビュー
ネット上の考察班からは、初期の段階(2〜3話あたり)から「真犯人は星崎(奥平大兼)では?」と予想されていた。少しだけ愉快犯じみた言動が目立つこと、他の何人かの生徒のように大きな問題は起こさない代わりに、上手いこと主要人物と顔馴染みであることなどから、比較的、予想は簡単だったように思う。
このドラマの秀逸なところは、真犯人が予想通りだったとしても、それで面白さが半減しない点にある。
一週目の人生で九条(松岡茉優)を突き落としたのが星崎で、二週目の人生でもそうだった。きっと多くの人がそう考えていたにもかかわらず、「見応えのあるドラマだった」と充足感に満ちている。その理由は、最終回を彩るのにふさわしい結末だったから、そして、そこに至るまでの道のりが丁寧に描かれた脚本だったからだろう。
星崎の目からは、この世界が灰色に見えていた。
彼の口からポツポツと語られた、自転車のブレーキをかけずに、全速力で坂を駆け降りる遊びについてのエピソードが興味深い。みんなが笑ってくれると思って、全力で駆け抜け身体全体でぶつかって見せたら、引かれてしまった。その瞬間から、周りとズレている自分を実感するようになった。
実際に彼は言っていた。つまらない教室を変えてくれたのは先生だ、と。九条を主人公に映画を撮りたい、とまで言っていた星崎の気持ちに、偽りはなかっただろう。それでもいつしか、せっかく色のついた景色から、また少しずつ色彩が失われていくのを見るのは、どれだけの絶望を伴っただろうか。
星崎は、九条を突き落としたあと、世界や自分自身に対する虚しさを抱えながら、自らの命さえも捨てようとしていた。「まずは自分だけが、自分の思いを信じてあげる。そうすればきっと、変えようと動けるはず」……そんな九条の渾身の言葉も、今回ばかりは、彼にだけは届かない。必死の説得も届かず、星崎は渡り廊下から身を投げてしまう。
しかし、星崎を助けるため、九条の夫・蓮(松下洸平)やクラスメイトたちがやってきた。その姿を見ながら、彼は言う。「色がついてる」と。
ギリギリのところで助け出された星崎の心は、きっと今後も迷うだろう。色がついては消え、またもや、白黒の世界で生きていくことに恐怖を感じるかもしれない。
それでも彼は、クラスメイト全員が自分を助けるために走り、「俺たちのために、死ぬな」と言ってくれたことを忘れない。彼らの後ろに見えている、真っ赤な夕焼けの色を忘れない。
まさに、急死に一生を得た九条。その後、不意にあらわれた浜岡(青木柚)によって刺されてしまうが、なんとか命を繋ぎ留めた。
この物語は、一度は生徒の手によって命を失いかけた九条が、ふたたび一年間をやり直す過程で“最高の教師”を目指す話だった。そして同時に、九条にとっての“最高の教師”とは誰かを、実感する話でもあった。
彼女は、生徒によって殺され、そして、生かされたのだ。最高の教師は、生徒自身のことでもあった。
九条が発するメッセージ、そして生徒一人ひとりの苦悩が解き放たれていく様が、丁寧に描かれた脚本。ドラマ「3年A組」とリンクしたこの物語は、今後も折に触れ、脳裏をかすめていくだろう。迷うとき、悩むとき、何もかも嫌になって、投げ出してしまいそうになるとき。彼らの言葉がきっと、頭のなかで響く。私たちが、私たちの人生において、もっとも良い選択をするために。
※この記事は「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)日本テレビ