<転職の魔王様>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
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とある人物から電話を受けた洋子(石田ゆり子)が、突然、青ざめた表情でオフィスを飛び出していく。向かった先は、洋子が唯一担当している求職者・五十嵐君雄(金子ノブアキ)の自宅。部屋に閉じこもった息子が命を絶つかもしれないという両親からのSOSだったが、洋子がドア越しに声をかけると幸いにも君雄は無事。しかし、洋子に対しては「帰ってくれ」の一点張りで…。
『シェパードキャリア』では、ただならぬ様子を心配した来栖(成田凌)と千晴(小芝風花)が、洋子の帰りを待っていた。以前から、転職活動をした記録がない五十嵐君雄の存在が気になっていたという来栖に、戻ってきた洋子は君雄と恋人だった過去を打ち明ける。
13年前、旅行代理店に勤めていた洋子は、小学校教諭だった君雄と知り合い、恋人関係に。二人は結婚も考えていたが、ある日突然、君雄が辞職。その理由は明かさないまま、君雄は洋子に別れを告げ、以来10年もの間、自室に引きこもっているという。洋子は、恋人の異変に気づけなかった自分を責め、いつか君雄の社会復帰の足がかりになればと、『シェパードキャリア』を立ち上げたのだ。
話を聞いた千晴は、洋子が人知れず背負っていた過去に衝撃を受け、自分に何かできることはないかと考え始める。すると、その思いは来栖も同じだったようで…。
第9話のレビュー
正直に申し上げて、「生産性」という言葉を「人」に当てがうようになってから、世界に対して少しずつ嫌な予感がしていた。「コストパフォーマンス(=コスパ)」「タイムパフォーマンス(=タイパ)」なんて言葉もどんどん一般的になってきている。もしも第三者から「タイパの悪い生き方をしている!」「あなたには生産性がない!」なんて言われたら、生きるうえでの解釈違いがひどすぎて、目眩で倒れてもおかしくない。
洋子(石田ゆり子)の恋人でもあった五十嵐君雄(金子ノブアキ)は、10年前にとつぜん教師の職を辞し、部屋に引きこもるようになってしまった。心配した千晴(小芝風花)や来栖(成田凌)は、協力し合って君雄が心を病んだ原因を探す。
その結果、当時の教え子だった藤川孝介(野村康太)が、イジメに遭った末に引きこもりになってしまった過去を突き止めた。学校に行けなくなった理由は「先生が余計なことをしたからだ!」。孝介を助けようと手を差し伸べた君雄の行動は逆効果だったようで、それが深い心の傷になってしまった。
良かれと思い、救おうと思ってとった行動が、さらに他者を深い闇に落とすことになった。自分のしたことが許せない、取り返しがつかない……そんな思いは、どんどん自罰的な思考を加速させる。君雄は十年、部屋から出ることができずにいた。
彼を引き上げたのは、諦めずに彼の元へ通い続けた洋子の存在、そして、22歳になった藤川の“本当の思い”だった。
5年間、部屋から出られなかった彼は、17歳になったときに「このままじゃいけない」と一念発起。フリースクールに通い始め、社会復帰を目指したという。支えになった言葉は、君雄からの「どんな形でもいいから、人と繋がることを諦めないでほしい」だった。
君雄の言葉は、長い時間を耐え抜いて、教え子を救った。そして巡り巡って、君雄自身の心も救う。
来栖が言う。「引きこもりに生産性がないなんて、誰が決めたんですか」。そもそも「生産性」なんて、命あるものにあてがう言葉ではないことは大前提のうえで、そんなものはあろうがなかろうがどちらでもいい。
人の命に価値なんてものさしはないけれど、もし無理やりに測ろうとしたところで、「生産性」なんて言葉が浮遊している場所とはもっとも遠いところでしか測れないはずだ。命なのだから。
仕事をしていなければ、他人に認められなければ、社会で自立していなければ、自分を自分として誇りに思えないかもしれない。それでもこのドラマは、人としての尊厳は人の数だけあり、軽率に他者に侵害させてはならないことを教えてくれる。
物語は最終章へ。千晴、来栖、そして天間(白洲迅)をめぐる恋愛要素も顔を出す。彼らの歩む道は、どこへ向かっていくのだろうか。
※この記事は「転職の魔王様」の各話を1つにまとめたものです。
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