続・朝ドライフ

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2023年03月11日

<舞いあがれ!・起業編>22週目~最終週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<舞いあがれ!・起業編>22週目~最終週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第104回のレビュー

「どういうこと?」
「なんで舞が?」
「うちの仕事の延長なんてレベルやないなあ」
「反対してるのとちゃうで。ただ舞のカラダはひとつしかあらへんからなあ」

舞(福原遥)が東大阪の町工場を結びつけるために商品開発をはじめ、それを聞いためぐみ(永作博美)は上記のような言葉で心配します。

めぐみの心配をよそに町工場の人たちは盛り上がっています。希望を失いしょぼくれていた人たちが舞のおかげで元気になっていくのです。

舞は遅い時間までインテリア・デザインをしています。なぜかそのときは1階。2階だと貴司(赤楚衛二)を起こさない気遣いでしょうか。1階のめぐみは起きてきてしまいます。そのときの永作博美さんの起き抜けの顔がとってもリアルでした。

子供の頃は飛行機の絵をたくさん描いていた舞。いまやインテリア・デザインをするようになりました。絵を描いたり、機構を考えたりするのが得意であることは確かのようです。

うめづの鉄板の上でもノートを広げていると、御園(山口紗弥加)が起業を勧めます。しかもぐいぐいと「私も一緒にやりたい」と言い出します。舞を騙す悪魔のささやきのような言い方でこわい。営業に異動させられて先に期待できないし進退考えているから乗っかったれ〜と思っているようにしか見えないのはなぜなんでしょう。

それを聞いた雪乃(くわばたりえ)が「舞ちゃん、起業するの!」と大声を出し、帰り、店の前で、大きな声で騒いでごめん〜と謝っていると、めぐみが通りがかって「起業?」と聞きつけるという流れ。なかなか豪腕です。

と、ここで思い出したのは、先日、見た三谷幸喜さんの舞台「笑の大学」です。日中戦争の時代、喜劇作家(瀬戸康史)が、検閲官(内野聖陽)に喜劇は時勢に合わないとあれこれ要望を出されたりチェックを受けたりしながら、その無理難題をすべて受け止め台本を書き直していきます。いろいろな制約によって無理くりな展開になってしまうこともありますがそこをなんとかおもしろく見せようとする作家の矜持は、実際、三谷さんがテレビドラマを描いていて、プロデューサーから様々な直しをリクエストされた体験に基づいているそうです。

「舞いあがれ!」を見ていると、作家が突きつけられる様々な制約や要求が透けて見えるように感じます。

第103回で山田(大浦千佳)が舞を「お嬢さん」と呼んだことがSNSで話題になっていました。最初は舞を社長の娘がお気楽に会社に首を突っ込んでいると思って軽視していた山田が、舞の本気を認めて関係性がよくなっていたはずが、いまだに「お嬢さん」と呼んでいるのです。山田の心境はいかに?

親しみやもしかしたら大阪の伝統なのかもしれませんが、2015年の近代的な会社で、キャリアも積んだ舞を「お嬢さん」呼びすることに、舞の仕事のスタンスに対する批判めいたものをうっすら感じるのです。書いてる側も、舞のやっていることにうっすら疑問を感じているのではないかと。御園の言動にどこか利己的なムードが漂うのも、書き手の腹に落ちてないのではないかと感じてしまうのです。いや、作家はそんなこと微塵も思っていなくて、単に筆者の穿った見方かもしれませんが。

どんなに無理難題を課せられても、それをしぶしぶ、あるいは、なんとかかんとか対応するとその無理がうっすら出てしまう。無理を無理に感じさせずに華麗に乗り越えることができる作家は限られていて、それこそが才能です。桑原亮子さんは新鋭なので、朝ドラという大仕事を乗り越えて、大作家として舞いあがってほしいと願います。

【朝ドラ辞典 ヒロイン(ひろいん)】

主人公ですが、朝ドラの場合「ヒロイン」と呼ばれる。ヒロインはあれもこれもいろいろなことをパワフルに、やりすぎなほどやっていくことが多い。

※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。

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