<相棒 season20>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第9話レビュー
この世に生まれ変わりなどというものは、存在するのだろうか。
20年前にスーパーの駐車場で刺殺された関田という男。犯人は見つからず、関田の妻・園子(中込佐知子)は情報収集するためのチラシをまき続けていた。そんな彼女の前に関田の生まれ変わりだという吉岡翼(今井悠貴)が現れる。
刺された箇所や凶器の形状など、犯人と被害者しか知り得ない事実を記憶している翼。しかも、彼が生まれたのは関田が死んだ当日。確かに不思議すぎる一致だ。
そして、翼の父・博幸(画大)が20年前の事件当日、殺人現場のスーパーを訪れていたのが判明。気になった右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は吉岡家を訪れて話を聞く。しかし、現場で「タイヨウ」と呼ぶ父の声を聞いたという翼に対して博幸はそれを否定した。
翼によれば、これまで吉岡家は転居を繰り返し親戚づきあいもないという。両親は自分に何かを隠している…と苦悩する翼。その後、彼は何者かに刺されてしまう。ただ、犯人は園子だとすぐに判明。夫の記憶を持つ翼に自分のことは覚えていないかと問いただし、殺されたときの記憶しかない彼に怒りを覚えて彼を刺してしまったのだった
園子のために伊丹(川原和久)たちの前で口を閉ざした翼。記憶があるというだけで何も悪いことはしていないし、他人を庇う優しさも持ち合わせた彼がなぜこのような目にあうのか。つくづく気の毒になった。ただ、刺されたときのことしか覚えていない彼の記憶は、生まれ変わりだとするとだいぶ不自然だ。
右京が超常現象を好むこともあり、たまに心霊的な要素も混ざる「相棒」。だが、今回の生まれ変わりの謎解きは非常にシンプル。翼が事件について記憶していたのは、単純に現場を目撃していたからだった。
実は翼の本名は太陽。彼は母・直美(ともさと衣)と彼女の一人目の夫の子供だが、この元夫からDVを受けていた直美は、息子を元夫の戸籍に入れまいと妊娠を隠して離婚。博幸と再婚して太陽を無戸籍で育てた。その後、第二子の翼が死亡した際に死亡届を出さずに埋め、太陽を翼として育ててきたのだった。
太陽のためにしたことだと語る吉岡夫妻だったが、右京は「死体遺棄はれっきとした犯罪」「翼くんの死亡届を出さず、その戸籍に太陽くんを入れていることも法に触れる」と非難。「太陽くんにも翼くんにも親としての責任を果たすべき」と言っていた冠城もいつになく怒りを覚えているように見えた。
そして、関田の遺体を目撃していた博幸の証言により、刺殺事件の犯人も明らかに。殺したのは、スーパーの店長・八神淳一(岸博之)の息子で当時中学生だった八神友彦(栗原卓也)。事件当日、駐車場で太陽と仲よくなってナイフを見せていたが、それを咎めた関田が警察に通報しようとしたので思わず刺してしまったのだった。
息子の罪を隠すべく凶器のナイフを持ち去った淳一。「親なら誰だって助けたいと思う」という彼に右京の怒りの言葉が突きささった。
「それが親の愛情だと思ったら大間違いですよ。あなたは友彦くんから罪を償う機会を奪ったのですから」
博幸と淳一。いずれも息子を守ろうとした父親たちだが、別の選択はできなかったのだろうか。何とも歯痒く悔しいものが残る事件。最後に翼が「太陽」として生きるのを受け入れたことだけが救いだった。
今回、「生まれ変わり」を否定はしなかったものの、あまり惑わされずに謎を解いた右京。冠城から「右京さんの前世はシャーロック・ホームズだったりして」と言われたときも、「シャーロック・ホームズは架空の人物ですから」と至極冷静に返していた。
でも、もしも右京がシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロの生まれ変わりであったとしたら、それもまた素敵なのではないかと思う。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
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