<相棒 season20>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第5話レビュー
2か月前に失踪した元刑事・水木の娘とアパートで死亡した警備員の男。二人の繋がりを教えてくれたのは、事件の全てを見ていた一匹の亀だった。
首を吊って亡くなっていた紅林という男。一見自殺のようだが、後頭部に傷があり部屋には指紋をふき取った痕跡。中から施錠され密室殺人が疑われる状況。そして、飼っていたらしい亀がいた。
なぜかこの亀にかなり興味を示す右京。「亀は日光浴が必要」と自ら水槽を運んだり紅林のスマホに残る亀の動画を「とても面白いです」と見入ったりする。好奇心の強い彼だが、これほど動物や生物が好きだったろうか?と、若干疑問を感じた。
再びアパートを訪れた右京たちは、一人の刑事と会う。彼は水木の元部下。ネットで紅林の部屋に女性が監禁されている…という趣旨の書き込みがあり、娘の沙也加ではないかと疑った水木は独断で家宅捜査を行ったという。
そんな中、紅林と同じ警備会社に勤める女性がアパートを訪れていたのが判明。かつて紅林と恋愛関係にあった彼女は合鍵を返しに行ったが、不在だったので窓の桟に置いていった。つまり家に入る方法があり、密室殺人ではなかったということだ。
紅林の隣に住むのは、引きこもりをしている卓司とその母親。事件現場に最も近い部屋で日中過ごす卓司から話を聞こうと考える右京たち。しかし、母親の富士子は「あたしが言ったくらいで出てくるような子なら、どんなに楽か」ととりあわない。長年引きこもる息子のために80歳過ぎだというのに工場で働く彼女。「拳銃でもなんでも突きつけてあの子を逮捕すりゃいいだろ。その方がせいせいするよ」という言葉から悲痛さが伝わってくる。右京たちはアパートのドアをノックして卓司にじかに呼びかけもしたが、彼が出てくることはなかった。
その後、改めて紅林の部屋を調べる右京たち。またも亀を気にする右京だったが、亀の歩く床を見てあることに気づく。床に木目の敷物が敷かれていたのだ。敷物をはがすと床下収納があり血痕が見つかった。
血痕は沙也加のもの。やはり彼女は紅林に監禁されていたのだ。そして、事件の夜に女性を背負った不審な人影がいた。捜査一課の伊丹らは、紅林を殺して娘を運んだのでは…と水木に疑いをかける。しかし、解剖の結果、そもそも他殺ではないと判明。さらに、水木にはアリバイもあった。
沙也加を連れ去ったのは誰なのか? 「こてまり」で頭をめぐらす右京と冠城。そこへ青木から電話。いつもの調子で嫌味を並べつつも重要な情報を送ってきた。その後、「俺もそっちへ行くから、ビールくらい飲ませろ」とねだった青木。しかし、冠城に「今そっち行くから」と言われてしまう。ちょっとだけ彼が気の毒に思えた。たぶん、右京たちと飲んで褒めてもらいたかったんじゃないだろうか。
そして、右京たちは富士子と水木の前で事件の真実を明らかにした。
青木が調べたところ、ネットの書き込みの主は卓司。彼は沙也加の監禁に気づいていたのだ。ただ、沙也加を部屋から救い出したのは卓司ではなく富士子だった。
家から出ない息子を案じてきた富士子。彼女にとって娘を思う水木の親心は他人事ではなかった。例の合鍵を使って部屋に入った富士子は、沙也加を救い出す際に紅林を殴打。その後、監禁が露見するのを恐れて紅林は自殺した。そして、現場の凶器や指紋を始末したのが水木。救出した娘の変わり果てた姿を見た彼は、監禁事件をなかったことにできれば…と考えたのだった。
「巻き込んでしまって申し訳ない」と謝る水木。彼に富士子は次のように語った。
「親ならみんなあんたと同じように思ってる。子どもが不幸なのはみんな自分が至らなかったからじゃないかって」
「周りに何と言われようが、子どものためになることなら何だってやってやりたい。どんな苦労だって甘んじて受けてやりたい。そう思うのは当たり前のことじゃないか。あたしはもう一度頼まれたってまた同じことをするよ」
この場面、ベテラン女優・草村礼子の演技が秀逸で、富士子の思いが痛いほど心に響いた。確かに彼らのしたことは罪と呼ばれるもの。でも、その奥には尊い愛情があった。
結局、捜査一課に連行される水木と富士子。しかし、彼らが車に乗ろうとしたときにアパートの扉が開いた。卓司が部屋から出てきたのだ。彼もやっと母の思いを受けとめたのだろう。
今回妙に亀に執心だった右京。ただ、その理由は途中でわかった。茉梨から「以前亀を飼ってらしたことが?」と聞かれた右京は、「はい。それはそれは手の焼ける亀でしてね」と答えていた。
右京のそばにいた“手の焼ける亀”とは、おそらくあの初代相棒。亀を見守りながら、きっと彼のことを思い出していたのだろう。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
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