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2021年11月04日

<相棒 season20>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<相棒 season20>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第6話レビュー



「ペンは剣よりも強し」という言葉がある。人が書く言葉は時に雄弁な影響力となり、時に誰かを刺す鋭敏な刃物になるときもあるだろう。

今回の「相棒」は、「ペンで人を殺せるか」を試みた作家の物語だった。

殺害された小説家の福山(菅原大吉)。彼は22年前に娘を殺され、当時10代だった犯人=少年Aは少年院に送られるが後に更生していた。

福山の作品には「関ヶ原の合戦の西軍の武将」など、特定の括りを使って登場人物に名前をつける“マイルール”があり、それはファンたちの間でも知られていた。ただ、連載中の小説には、「川上」という同じ名字の人物が二人。さすがに不自然だ。さらに、同作品で謎の犯人「アンノウン」に最初に殺される少女が福山の娘と同じ「しおり」という名前。もしやこの小説は22年前の事実を元に書かれたのでは?と、右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は睨んでいく。

少年Aの行方を求めて少年院を訪れる右京たち。法務教官の三上(大川ヒロキ)は社会復帰した者の居場所は教えられないと口を閉ざす。しかし、右京は得意の「最後に一つだけ」で、過去に福山が情報を求めて少年院に来たことを聞きだした。

その後、特命係は少年A=村上健一(斉藤悠)の住所を突き止める。村上が住む住宅街を訪れて右京と冠城が目にしたのは、「川上」の表札の2軒の家。調べていくと、近隣の表札名はみな福山の小説の登場人物。例のマイルールはここにあったのだ。そして、右京は村上の自宅前で村上本人と対面。福山の小説の名を聞いた彼はその場を逃げ出してしまう。

伊丹(川原和久)らの取り調べを受ける村上。そこで、福山が小説を連載している雑誌を定期的に村上の元に届けていた事実が判明。小説を読んだ村上は、登場人物がすべて近所の表札だと気づいて怯えていた。小説のマイルールを知る読者は、いずれ村上の家にたどりつく。その頃合いを狙って福山が小説に出てくる「しおり」は殺された娘の名だと言及すれば、その意図もまた確実に読者たちに伝わるからだ。これこそが福山の仕掛けた復讐劇だった。

ペンを武器に憎い相手を追い詰めた福山。正直筆者は彼の行いに戸惑いを覚えた。娘を奪われた悲しみが決して拭えないのはわかるし、村上が取り返しのつかない罪を犯したのも事実。しかし、だからといってこのような形で無念を晴らしていいものなのか?と、そこは疑問に思えてならなかった。

小説に名前が出るのを恐れて福山を殺害したのでは…と伊丹に迫られ、犯行を認める村上。ただ、彼の様子は少しおかしい。現場から消えた最終回の原稿についても「どこかに捨てました」とあやふやな発言をする。このあたりで、筆者は村上が犯人とはどうにも思えなくなってきた。もはや正常な判断ができず、やってもいないことを自分の罪にしてしまっているような感じがあった。

右京も村上の言葉にひっかかったらしく、彼の妻・由梨(佐久間麻由)を訪ねる。彼女は一か月程前、夫婦で経営するレストランに福山が来店したのを明かす。村上を前に怒りをあらわにしていく福山に必死で頭を下げた由梨。その夜夫が「死ぬしかない」と口にしたので、以来目を離さず、事件当日も彼は家にいたと証言した。

そして、右京は気がついた。村上以外にも福山の小説に怯える人物がいたことに。それは法務教官の三上。福山が少年院に来た際、実は情にほだされて村上の情報を教えた彼こそが福山を殺した犯人だった。

小説を読んで自分が個人情報を漏らしたのがばれるのを恐れて福山に談判しにいった三上。しかし、「あんたが心配しているのは彼(村上)のことじゃなくて、自分のことかな」と言う福山につかみかかり殺害してしまったのだった。

福山が書き上げた最終回の原稿を奪った三上。しかし、中身を読んで燃やすことなどできなかったという。書かれていた内容、それは「アンノウン」が罪を認めて火に飛び込み、主人公の刑事もまた罪と一緒に燃えつきていく…という結末だった。

「ペンで人を殺せると思う」と語っていた福山。しかし、結局村上の名前を明かすことはなかった。彼を思いとどまらせたのは、おそらく夫を懸命に庇った由梨の姿。右京も言っていたが、殺したいほど憎む相手にも守ろうとする家族がいると彼は知った。だからこそ、ペンを剣として振りかざすのをやめ、代わりに憎しみをペンで昇華させていったのだろう。


※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。

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