<相棒 season20>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第3話レビュー
「よく来たな、加西周明の館へ」
加西が残した仮想世界へやってきた右京、冠城、青木の3人。そこはまるでRPGのような世界観。西洋風の館に忍者姿で乗り込む右京たちがなんともミスマッチだ。「まぬけすぎないか?」と突っ込んだ冠城の気持ちがよくわかる。
そんな冠城に対し、相変わらず偉そうな青木は「俺は忍法だって使えるぞ」と右京に姿を変えてみせる。まるで悪ノリしている子どものようだが、この世界で音声などまでも変えられるように彼が仕込んだらしい。憎たらしいがやはり優秀だ。
一方、栗橋の取り調べを続ける伊丹たち。しかし、栗橋は黙秘を貫く。そして彼の後任として内閣情報官に任命されたのは、なんと社美彌子だった。特命係の動きを鶴田サイドに流しつつも特命係に有益な情報をもたらす彼女。もしや二重スパイ?と疑う右京たち。しかし、当の美彌子はやんわりと受け流すのみ。昔から何を考えているかどうにもわかりにくい彼女。今回もその真意が最後まで謎だったように思う。
その後再び仮想世界に侵入する右京たち。同じく仮想世界を訪れた鶴田たちと直接対決する。
仮想世界で鶴田たちの前に現れたのは死んだはずの柾庸子と加西、そして、右京と冠城。実は柾庸子は死んではいなかった。仮死状態になって自殺と見せかけて、新しい戸籍を受けとって別人になろうとしていたのだった。もちろん鶴田の差し金。以前、日本にはない証人保護プログラムを起動させてある人物を別人に生まれ変わらせた小野田公顕。小野田を手本にしているという鶴田は、同じ手を使って加西殺しの罪を被った庸子に新しい人生を与えようとしたのだった。
さらに、その場で一同が耳にしたのは鶴田と加西の会話。国民のスマホやメールを盗み見する国民監視の陣頭指揮を鶴田がとっている…という恐ろしい内容である。次々に悪事をばらされて逆上する鶴田。目の前にいる加西は警察関係者だろうと見抜くが、実は加西に扮していたのは右京だった。右京のふりをしていたのは青木。しかし、庸子だけは庸子のままだ。そして、「警視庁へ出頭願えますか」という右京の申し出を鶴田は拒否。仮想現実を消滅させてしまう。
そのまま立ち去ろうとする鶴田たちだったが、伊丹たちが立ちふさがる。柾庸子を逃がした件を咎められてもとりあわない鶴田。しかし、出雲が庸子本人が証言したと言い放つ。仮想世界で「誰だ」と問われて「あたしはあたしです」と言った庸子。パリにいる彼女の部屋にはVRゴーグルがあり、本当に本人だったらしい。
そして、改めて例の幽霊ビルを調べる右京たち。仮想現実の館の見取り図を見て、バーチャルの館はこれほどの広さがあったのか…?と、右京は不思議に思う。
その後、右京と冠城は鶴田の元へ赴く。そこで、中郷都々子と女性の殺し屋の死に関する真実を右京が明らかにした。殺し屋を殺害したのは柾庸子だった。
都々子と姉妹のような関係で彼女の部屋の合鍵を持っていた庸子。都々子の家から殺し屋が出てくるのを目撃し、中に入って都々子の遺体を発見。自身が通報するわけにいかず、遺体が痛むのを防ぐために冷房をつけ、早く発見されるよう鍵をかけないで部屋を出た。そして、殺し屋を自らの手で葬りさったのだった。
ここまで来てなお「みんな勝手に俺の気持ちを推しはかってやったことだ」と罪を認めない鶴田。ついに右京たちは最後のカードを切った。冠城がスマホで音声を再生。それは、仮想現実で流れた国民監視に関する鶴田と加西の会話だった。仮想空間は壊されたが、幽霊ビルにあった見取り図(2次元コード)を読み取った先に音声データが保存されていた。これこそが加西の切り札だった。
データが残っていたことを知ってついに顔色が変わった鶴田。そんな彼に右京は最後に言い放った。
「手本にしているつもりかもしれませんが、あなたは小野田公顕の足元にも及びませんよ。思い上がるのもほどほどに。あなたが小野田公顕を語るなど、虫唾が走る」
結局、鶴田は観念したらしく出頭。狡猾な官房長官と特命係の戦いにようやく決着がついた。
前シーズンから続いたこの事件。鶴田が出頭した…と聞いたとき、見ているこちらも張り詰めた緊張がやっと切れるような思いだった。鶴田の悪事を暴くと宣言していた右京と相棒の冠城。なんだかんだで役に立った青木。特命係と共闘した捜査一課。みなの思いがやっと報われた。
そして、この壮大な事件が解決したとき、何よりも心に残ったのは、今は亡き小野田官房長の存在の大きさ。特命係を作ったともいえる小野田は、特命係を時に利用し時に対立しながらも、後ろ盾となり続けた男。鶴田が彼のスケールに及びもしないことは長くシリーズを見ているファンも納得するところだろう。右京が鶴田にたたきつけたセリフに筆者もうなずくばかりだった。
そして、今回のラストに思いがけぬサプライズが訪れた。並んで歩く右京と冠城、甲斐は一人の男(岸部一徳)とすれ違い、その人物に思わず右京は「官房長」と声を上げる。これにはさすがにファンが沸き、SNSでも多くの喜びの声が上がった。また、あれは岸部氏が同局の「ドクターX」で演じている神原晶では?という意見も多数見られた。
あの男は小野田だったのか、それでも別の誰かなのか。それはわからずじまいで、右京も「僕の見間違いでしょうから」としていた。答えは見た人がおのおので決めればよいことなのだろう。
いずれにしても、この杉下右京のもう1人の“相棒”は、右京、そして、作品を愛する人々の心の中で生き続けているに違いないのだから。
※この記事は「相棒 season20」の各話を1つにまとめたものです。
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