<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第39回のレビュー
ツヤ(水川あさみ)が危篤の報を受けて、スズ子(趣里)はステージを終えて、すぐに大阪へ戻ります。2階にあった寝室からツヤが1階に移っているところに、それだけツヤの容態が悪化していることがわかります。在宅介護の細かいリアリティーですね。
枕を高くし、すこし上体を上げて寝ているツヤ。肌艶は悪くなさげですが、表情はちょっとしんどそうです。枕を2個、ひもで縛って高さを出しているようで、現代のように、ベッドの角度が調整できる便利なものはまだないのです。
ツヤの病の名前を知るスズ子。不治の病と言われているものでした。
そこへ、アホのおっちゃん(岡部たかし)が桃を手に入れて戻ってきます。
桃を切って、ツヤの枕元に届けるスズ子。そのまま、添い寝してしまい、朝になると布団がもぬけの殻。
ツヤが番台に座って、ちゃきちゃき働いていました。
桃の奇跡、再び?
でもそれは長くは続かず……。再び、倒れるツヤ。
蝋燭が消えるとき、一瞬、大きく燃えるようなものだったのでしょう。あるいは、スズ子にこれまでどおりの元気な姿を見せたい、ツヤの意地か。基本、ツヤはかなりのガッツの人なのです。
危篤の知らせにすぐ来ず、ステージに立っていた自分を「どアホ」と嘆くスズ子に
「どアホで上等や」と励ますツヤ。
歌を優先する娘、他人の子供を奪った母、どちらも「どアホ」なのです。
「死んだら、2度とおかあちゃんには歌、聞かせたらん!」とすこしこんがらがったことを言うスズ子に、梅吉(柳葉敏郎)が割って入って、「聞かせたれ」「このいけず どアホ娘が」と言って、父娘のどつき漫才のように発展します。
スズ子が歌うのは、少女の頃によく歌っていた思い出の「恋はやさし野辺の花よ」。
心をこめたこの歌を、もし羽鳥(草彅剛)が聞いたなら、きっと絶賛したでしょう。
澄んでやさしい娘の歌を聞く、ツヤの枕元には、少女時代のスズ子の歌う似顔絵が飾ってあります。ステージのスターである彼女の写真は、お風呂やの番台にたくさん飾ってあって、でも寝室に飾るのは、歌の好きな夢いっぱいの元気な小さなひとりの娘の姿なのです。
「この日、お母ちゃんは天のお星様になりました」は、少女のときのスズ子に戻ったような声でした。
東京に出るときは、スズ子は、ほんとうの母キヌ(中越典子)のことが気にかかってもやもやしていたけれど、結果的に、キヌのことを思い出すこともなく、最後は彼女の母はツヤしかいなかった。血の繋がりよりも時間や心が強いのだということが、なんの言葉もなくても伝わってきました。
さて。ここからは余談です。「走る」という演技について考えてみます。
第39回では、スズ子が通りを走って実家に戻ってくる場面と、アホのおっちゃんが大きな足音を鳴らして風呂やの戸を開けて飛び込んでくる場面と、2つ、「走る」演技がありました。
どちらかというと、実際に走ってる趣里さんよりも、飛び込んで来ただけの岡部さんのほうが、臨場感があったのは、リアルとリアリティのちがいです。お芝居の世界では、リアリティのほうが大事なのだなと感じました。いかにも息せき切って入ってきた感じの岡部さんが巧い。こういう芝居は、辛島役の安井順平さんも「ちむどんどん」のときも巧かったのです。熟練の技という感じがします。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
「ブギウギ」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK