続・朝ドライフ

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2023年12月02日

<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第33回のレビュー

スズ子(趣里)の下宿に血相変えて乗り込んできた辛島(安井順平)の言い分は、もっともです。

長年育てた梅丸をやめて日宝に行く準備を秘密裏に進めているなんて、義理と人情に欠いた行為であります。

悲しいと、辛島に人情に訴えられ、ようやくスズ子は自分がとんでもないことをしたことに気づきます。

問題意識がなくふらりと移籍してしまいそうになったのは、松永(新納慎也)への好意からなのでしょう。恋愛とビジネスがスズ子のなかで混ざりあい、判断能力を失ってしまったのだと思われます。

松永が意図的にそう仕向けたのか、はっきり描かれていませんが、スズ子がすっかりその気になって、一緒に逃げてくださいと迫ると、アメリカに愛する人を残して来ていると写真を見せます。

考えられるのは2パターン

1:松永の行為は、欧米人のふつうのコミュニケーションでしかなかった。
2:世間知らずのスズ子を松永がうまく騙した。

どちらにも解釈できそうですが、新納慎也さんが演じる役はいつも憎めない役が多いので、1のほうであってほしい気がしますが……。御曹司設定だし、悪い人ではないと思いたい。でもアメリカに残してきた愛する女性というのも、イギリスやフランスにも、いるんじゃないかという気も。悪気なく、女性とたくさんつきあっている可能性も考えられます。

移籍問題は、本来、もっと生々しく、洒落にならないものなのであることは、保養所に隠れるとか、軟禁するとか、梅丸の社長・大熊(升毅)の凄みある怒りとかいうことから、なんとなくはわかります。でも、あくまで、問題は重く、じめっとならないようになっていて、辛島が書類を食べちゃうとか、スズ子が下宿の2階から飛び降りて、辛島から逃亡するとか、いつもの喫茶店に変装して出向くとか、軽妙になっています。

移籍話がバレたと知って「なな何だって」とテーブルをがたつかせる松永に、スズ子がテーブルを抑えるコンビベーションのよさや、
スズ子「わてといっしょに逃げてください」
松永「what」
「わて」と「what」の音がかぶっているとか、軽演劇感があり、楽しい。

スズ子の初恋はひとり相撲でした。恋の終わりは、「別れのブルース」で表現されます。曲をバックに夜の街を歩くスズ子は、カラオケの映像みたいでした。

悲恋ムードをガシャッと窓のシャッターで無下に終わらせ、
「女だからって泣けば許されると思ったら大間違いなんだよ」とガミガミ説教するコロンコロンレコードの社員・佐原を演じているのは夙川アトムさん。今回はメガネでクセのあるコメディリリーフは辛島役の安井順平が担っていて、夙川さんは、ドライな社員を演じています。

【朝ドラ辞典2.0: 夙川アトム(しゅくがわあとむ)】

元芸人で俳優。「べっぴんさん」で演じた小山は、メガネで神経質そうに「大急ですから」といちいちいやみな百貨店の社員。人気が出て、スピンオフ「恋する百貨店」にもなった。「スカーレット」では、ヒロインの陶芸の兄弟弟子役。「ブギウギ」では、笑い少なめ、ビジネスライクな梅丸社員・佐原を演じている。メガネのあるなしで、雰囲気が随分変わる。

佐原にも茨田りつ子(菊地凛子)にも、ちょっと売れていい気になっているとチクリと指摘され、スズ子が傷心で下宿に帰ると羽鳥(草彅剛)藤村(宮本亞門)が来ていて、ふたりの会話の面白さに、スズ子の心は救われます。草彅さんと宮本さんのやりとりには、ふたりの作家の天真爛漫な才能を感じさせます。

それにしても、ツヤ(水川あさみ)に教えられた「義理と人情」。子供のとき、あんなに大事にした「義理と人情」を忘れてしまったらあかんやろスズ子。とはいえ自分のやりたいことと義理と人情、どれを選ぶか岐路に立たされたら、人間はどうしたらいいのでしょう、なんてことも笑いながらも考えさせられました。

※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。

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(C)NHK

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