<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第46回のレビュー
「いっちょやったりましょう!」と勢いよくはじまった第10週「大空の弟」(脚本:櫻井剛、演出:盆子原誠)。でも、その勢いはみるみるしぼんでしまいます。スズ子(趣里)は「福来スズ子とその楽団」を結成、トランペット(一井〈陰山泰)〉とピアノ(二村〈えなりかずき〉)とギター(三谷〈国木田かっぱ〉)とドラム(四条〈伊藤えん魔〉)と、やたら低音のいい声をしているマネージャーの五木ひろき(村上新悟)。最低単位の楽団ですが、少数精鋭と前向きに捉えます。
が、仕事はなかなか入ってきません。スズ子の人気だよりでしたが、梅丸楽劇団を出たうえ、派手な歌と踊りを禁止されている彼女には魅力がないと思われているようで……。さらに、敵性音楽を歌うという悪いイメージもついています。
どうしたものかと悩んでいる楽団の話を、朝ドラあるある「立ち聞き」してしまうスズ子。でも、にっこり微笑み、営業に励みます。そんな彼女を茨田りつ子(菊地凛子)は東北の言葉で「じょっぱり」と表します。羽鳥(草彅剛)もその言葉を気に入ってました。バドデジデジドダにも少し似ているからでしょうか(似ているのは濁点があるところだけですが)。ちなみに羽鳥も、警察で茨田の話を立ち聞きしていました。
さて。趣里さんの良さのひとつは、無駄に強気に見えないところです。小柄で華奢でちょっと弱そうにも見えて、でも必死に頑張っているふうに見えるので、応援したくなる。もともと、すごく精神的に強烈にタフに見える人だと、その圧に引いてしまうので、趣里さんは程よい気がします。
いま、そのタフさのバランスが危ういのが、小夜(富田望生)です。スズ子に追い出されたものの、楽団が結成されたと知るや、再び事務所(一井の家)に押しかけてきます。スズ子は複雑な表情をしながら受け入れ、また下宿に連れて帰ります。ガツガツ、食事をし、明るく元気にふるまう小夜。
そしてまた、梅吉(柳葉敏郎)と、暢気にカメを眺めてーー。
小夜のたくましさが、ともすれば、図々しいという悪印象一直線になりそうなところを、富田さんがギリギリのラインで演じています。
チズ(ふせえり)に食費を多めに入れますと気遣うスズ子。楽団の資本は五木が借りてきたようですが、おそらく、スズ子もいくらかは出しているのではないかと想像します。言い出しっぺだから。梅丸のスターだったから、相当貯金はしてあったのではないでしょうか。
梅吉と小夜が、亀を眺めていると、チズがやって来て。亀の顔真似をしているふたりと、それを素直に笑えないチズの対比に、いやな予感が……。
役場から届けられた六郎(黒崎煌代)の悲しい近況。月曜からのこの展開に、「あさイチ」でも言葉がない様子でした。
ところで、梅吉が、亀が狭いところにずっといるのは、「居心地ええねん。ぼーっとしてるだけでおまんま食えるんだから」と言うのは、自身のことを物語っているようにも思えます。とくになにもせず、家にいて、スズ子に食費を出してもらっている。人間にも亀のような人がいる。亀はダメとは言われないのだから、人間だって亀のような人がいてもいいのではないか。そんなことを思ったりもしました。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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