続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年12月02日

<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第43回のレビュー

スズ子(趣里)は、彼女に憧れて、弟子にしてほしいと梅丸楽劇団にやってきた小夜(富田望生)を、下宿に連れていきます。

住むところがみつかるまで、しばらくここで一緒に生活させてあげようという寛大さ。さほど広くもなく、なにより、梅吉(柳葉敏郎)もいるのに。

同じ部屋に、血のつながらない男女が一緒に住むって、気まずくないのでしょうか。そもそも、スズ子は劇団のスターで高給をもらっているのに、引っ越さないのでしょうか。という疑問はさておき。

スズ子は小夜にお金を渡して、梅吉の世話を頼みます。小夜は、まめまめしく、洗濯物を畳んだりなんかして。そこで、下着をじっと見ていて、梅吉は困惑します。が、小夜は男性の持ち物に父の面影を見ていたのです。12歳で、親に捨てられて、奉公に出され、父と一度も会っていないという小夜。

親に捨てられた身の上は「おちょやん」のヒロイン千代(杉咲花)のようですが、父に悪い印象をもっていなさそうなところはちょっと違います。

梅吉はほだされて、勝手にずっとここにいていいと調子のいいことを言ったり、「お父ちゃん」と呼べと言ったり……。

スズ子が帰宅すると、部屋では陽気に梅吉と小夜が酒盛りをしていました。
梅吉は、小夜を六郎(黒崎煌代)の嫁にすると言って、たいそう気に入った様子。

調子に乗る小夜に、スズ子は「出てって」と冷たく言い放ちます。梅吉のことも「役立たずや」と激しくなじります。

スズ子は職場で、団員は赤紙が来て辞めていき、客が減ったうえ、大衆からたくさんの非難の投書が来て、これからの表現活動に暗澹たるものを感じているというのに、人の気も知らず、酒を飲んで、無礼講のごとく、自由に歌っているふたりにカチンと来るのは無理もありません。小夜の歌がなかなかうまくてノリがいいから余計に癇に障るでしょう。小夜の亀のモノマネがほんとうにイラッとするので、スズ子が怒るのもなっとく。富田さん巧い。

約束も守らず、言ってること(弟子になりたい)もしょっちゅう変わって(六郎の嫁になる)「信用できへん」という気持ちももっともです。小夜はちょっと調子に乗りすぎ。奉公に出されて苦労してきたふうにはいまいち見えない。屈託なさすぎ。嘘ついてるんじゃないかという気もしてしまいます。苦労した分、人に懐に入るのがうまくなっているとも言えますが……。

カンカンに怒るスズ子に、梅吉は「小夜ちゃんのほうがよっぽど娘みたいやった」と反論。これは痛烈。梅吉は本能的に生きるのがうまいのでしょう。人に甘えるのもうまいし、攻撃されたら防御するのもうまい。そうやってやなことを回避してきたかと思うと、なんか腹立つ。

同じ部屋に他人の男女問題といえば、「なにしてるの」とスズ子が入ってきたとき、薄暗い部屋で、お酒を飲んで、だらしない感じになっているふたりの姿に、朝ドラでなければ、もっとやらしい展開になってる可能性を想像してしまいました。不謹慎ですみません。

梅吉ばかり悲しんでいるから、スズ子は悲しむことができない。しかも、突然出てきた小夜のほうが娘のようだ、なんて言われて、ほんとうの娘ではないことを知っているスズ子にはやりきれない。その辛さを、チズ(ふせえり)が少し、救ってくれました。

「音楽を楽しみたい人たちと、ただしたい人たちとの板挟みだよ 誰のために何をすればいいのかわからなくなる」
(辛島)

国防婦人会しかり。いつの時代でも、ただしたい人っていますね。

【朝ドラ辞典2.0 奉公(ほうこう)】

戦前を舞台にした朝ドラでは、奉公に出る登場人物がよく登場する。家が貧しく、家計を助けるために働きに出て、その先で苦労する。代表的なものは「おしん」(83年)。ヒロインおしんが雪がつもった真冬の川を船で奉公先に運ばれていく別れの場面は名場面とされている。奉公先では理不尽な目にあい、逃げ出したりもする。近年では「おちょやん」(20年度後期)。では、ヒロイン・千代が父に売られた先は、幸い、いい人達で充実の日々を過ごすも、年季明けに父がまた彼女を売ろうとして逃亡することに……。「あさが来た」では、ヒロインの嫁ぎ先に奉公に来ている女中が、ヒロインの夫の妾になるならないでひと悶着あった。「スカーレット」は時代が戦後で、出稼ぎ。日本の歴史を知るうえで、奉公、出稼ぎという働き方の制度は避けて通れない。

関連語:出稼ぎ

※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。

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