<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第41回のレビュー
第9週「カカシみたいなワテ」(脚本:櫻井剛 演出:泉並敬眞)のはじまり。昭和15年、スズ子(趣里)が東京で梅吉(柳葉敏郎)と暮らし始めて1年が経ちました。つまり、ツヤ(水川あさみ)が亡くなって1年です。
当然ではありますが、梅吉はツヤを忘れることはできず、酒に溺れ、家の前の通りで寝てしまったり、朝も起きられずグダグダしたりしています。最初のうちは、脚本を書いていたようですが、すぐにそれもやらなくなっています。働いてもいないようで、完全に、スズ子に頼り切っています。困ったもんだ。
ここで思い出すのは、「おちょやん」(20年)のヒロイン・千代(杉咲花)のお父さん・テルヲ(トータス松本)です。働かず、ヒロインを売り飛ばしてしまった“朝ドラ史上最低の父”、稀代のダメ父として大不評を買いました。が、その
だらしない生活は、愛する妻(ヒロインの母)を早くに亡くした哀しみによるものだったことが後々、わかるのです。
生活がはげしく荒れてしまったことには、どうしようもなく深い哀しみがあったという理由を知ると、少しだけテルヲへの見方が変わったものの、娘を売って、さらにまたお金をせびりに来るという行為はやはり見逃せず、決していい印象にはなりませんでした。
「ブギウギ」でツヤが亡くなって、さらに生活が荒れた感じに見える梅吉に、テルヲもこういうふうに描けば、印象がまた違ったのではないかと感じました。
もちろん、梅吉はスズ子にお金をせびったりするほど卑しくはないので、けっして同じではないのですが。なぜ、人間は堕落してしまうのか、その要因について考えさせる点では同じように思います。
それにしても、極端に、戯画的に酒浸り感が出ているのは、脚本家が足立紳さんから櫻井剛さんに変わったからでしょうか(朝ドラ辞典「脚本家交代」参照)。作家が変わることで、生活が激減したことが明確に感じられるようになっているような気もします。
時代もせちがらくなってきています。日中戦争がはじまって3年、締付けが厳しくなる一方。朝ドラ名物・国防婦人会も登場。風紀の取締を行っています。梅丸楽劇団の演目を警察が監視するようになり、派手な演目は取りやめる慎ましく真面目な舞台を行うことになります。
英語は敵性語として禁止。楽器を和名で呼ぶことに。サクスフォンは「金属製ひん曲がり尺八」、コントラバスは「妖怪的四弦」。これはちょっとおもしろかった。スズ子の「誰が考えたんや」というツッコミにナットク。
スズ子は三尺四方からはみ出さずに歌わないといけなくなります。この状況がサブタイトルの「カカシ」です。が、本番中、我慢できなくなって枠から飛び出して……。
公演中止になるとチケットは払い戻しになってしまうようです。大変です。辛島(安井順平)がお気の毒。彼に、文句を言う客がいる一方で、ねぎらう客も。一昔前のドラマだったら、文句言う客ばかり描いて、劇団のピンチを強調していた気がしますが、昨今は、ねぎらう客を描き、しんどさを軽減しているようです。
スズ子は警察で取り調べを受け、派手なつけまつげをとるよう強要されます。とったらしじみのような眼になると拒んでいましたが、とったほうがかわいく見えました。
【朝ドラ辞典2.0 国防婦人会(こくぼうふじんかい)】
戦時中を舞台にした朝ドラに欠かせない存在。1932年、大阪で誕生し、戦場に行かない女性たちが銃後の守りとして、お国のために活動した。朝ドラではたいてい、ヒロインの自由な言動を批判し阻害する役割を担う。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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