<ブギウギ ・東京編>6週~10週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第31回のレビュー
梅丸楽劇団旗揚げから1年、昭和14年、スズ子(趣里)はすっかりスターになっていました。起爆剤になったのは、羽鳥(草彅剛)の「ラッパと娘」です。レコードも売れ、スズ子は「スヰングの女王」と呼ばれていました。この頃は、俳優たちは劇場の正面玄関から出入りするようで、そこにファンが集ってサイン攻めにします。想像ですがこうすることで、スター感を煽っていたのではないでしょうか。
そこへ、大阪から林部長(橋本じゅん)が訪ねて来て、梅丸少女歌劇団に戻ってくれないかと頼みます。が、スズ子も秋山美月(伊原六花)も今が充実しているのですんなりうんとは言えません。
ここでスズ子が「そらやっぱり わてらがおらないうのはわかりますけど」とさりげなく自信満々であることが可笑しかった。
充実しているのは、仕事のみならず、恋も?
スズ子は松永(新納慎也)、秋山は中山(小栗基裕)に心揺らしているところです。
秋山は中山の踊りに男役として憧れを抱いたのがはじまりでしたが、中山は彼女に娘役に転向し、自分とペアを組むように助言します。先輩だからそういうものかもしれないと思いながら、なんでも決めてしまう独断的な態度に、少し疑問を感じています。
秋山の悩みを聞いたおでん屋の伝蔵(坂田聡)は、男は「女を自分の手のひらに乗っけておきたいんだよ」と言います。
第31回では、今の時代ではいろいろ問題になりそうな、男と女のあり方が描かれました。
中山は、秋山の男役としての可能性を閉ざし、自分を支えるというか、引き立て役にしようとしています。そのほうが輝くというのもひとつの案ではありますが、秋山はどうもすっきりしません。
また、羽鳥と旧知の作詞家・藤村薫(宮本亞門)は、スズ子に歌を書くために、初対面でぶしつけに恋人の存在や恋愛経験を聞き出そうとします。今だったらセクハラと言われてしまいそうな行為です。
中山もそうで、恋が、芸を輝かせると思っているのです。それは間違いではなく、真実とも言えますが、問題は、中山も藤村も、女性にそれを強要していることです。
中山が秋山に背中をかいて、と頼むことも、場合によっては、ふたりの情を感じるいい場面になるところですが、目下、単なる亭主関白的な印象しかありません。
藤村はスズ子に「とびっきりの笑顔を見せてみろ」と強要。これも、やる人によっては嫌悪感200%くらいになりそうですが、いつもソフトな宮本亞門さんが演じているので、粗野な印象が薄めで助かります。
宮本さんは演出家で、ミュージカルやオペラをたくさん演出しています。MCなど顔出しのお仕事も多いので、意外な気もしたのですが、俳優をやるのは今回、はじめてなのだそうです。
名監督が名選手だったとは限らないと言われるように、名演出家が名優であるとも限りません。はたして、宮本さんの演技はーー。
ともすれば、セクハラになりそうな下卑たセリフをソフトにし、藤村という人物を愛らしく見せる、すばらしい演技でした。
後ろにいる羽鳥に語りかけるときに羽鳥と逆のカメラ側に振り向く動きはさすが、舞台の演出家であります。
「おばんです」と現れる茨田りつ子(菊地凛子)や、朝ドラ常連の夙川アトムさんのことも書きたいけれど、また明日!
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
「ブギウギ」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK