<ブギウギ ・ブギの女王編>20週~24週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第93回のレビュー
突如、ラクチョウのおミネ(田中麗奈)が怒鳴り込んで来ました。「真相婦人」の記事で、スズ子(趣里)がおミネたちパンパンについて語っているのを見て、自分たちの何がわかるのかと激怒したのです。記事は、スズ子が話したことが、湾曲され誇張されて書いてありました。
言ってないことが書かれる、というのはいまでもよくあります。
筆者は、基本、取材する側ですが、たまにコメントを求められることもあります。そういうとき、やっぱり、こんなこと言ってないのに……と思うようなまとめられ方をされて困るときがあります。
さて、スズ子は、このままおミネに誤解されることが我慢ならず、娼婦たちのいる街へと向かいます。街娼たちに囲まれて、歌を歌えと言われ、歌うと、なんとも下手くそで、誰も福来スズ子だと信じません。
ここで、すばらしい歌声を聞かせると、街娼たちが感動しちゃうので、ここはあえて下手にして、くすっと笑わせようという狙いなのでしょうか。
気分が乗らないと歌えないのか、ただでは歌えないのか、わかりませんが、あまりにもスター歌手の威厳がなさすぎて、いささか落胆もしたのですが、この場面では、スター歌手のように手が届かない人ではなく、もっと身近で親しみやすいヒロインを描く選択をしたのかもしれません。
「どうせあんたにあたいらの気持ちなんかわかりゃしない」とおミネに距離を取られてしまうスズ子ですが、実は、違いなんかないということを描きたいのかなと想像します。
折しも、秋山(伊原六花)が遊びに来て、スズ子のスターっぷりに舌を巻くと、
「スターやなんてとんでもない やってることはこれまでとなんも変わらへんのやし」とスズ子は答えています。
「東京ブギウギ」で一躍大スターになってしまったスズ子と周囲の格差が大きく広がって。でも当人は何も変わっていない。いつまでも、大阪の銭湯で育った庶民派なのだということなのでしょう。
スズ子は人知れず、愛助(水上恒司)を亡くして、残された愛子の育児と仕事を両立して踏ん張っている。秋山は、スズ子がもう歌えなくなるんじゃないかと心配していましたが、立派に立ち上がったことを喜んでいました。こんなふうに、わかる人にはわかることがありますが、わからない人たちは好き勝手言うものなのです。
街娼たちも、いろいろ事情があってのことなのに、世間から、やっかいな者たちとして誤解されています。理解されていない者同士、わかりあえるでしょうか。
ところで「真相婦人」は「真珠夫人」のもじりでしょうか。大正時代に菊池寛が発表した小説「真珠夫人」は庶民に愛され、映画やドラマになって人気を博しました。
2002年、フジテレビ系で昼ドラとして放送されたバージョンは、原作と異なる部分が多かったのですが、食卓に「たわしコロッケ」を出す場面など、極端な表現がおもしろいと大ブームになりました。
この頃(00年代)は、朝ドラより民放の昼ドラが盛り上がっていたと、筆者は拙著「みんなの朝ドラ」に書いています。やや低迷していた朝ドラが再び盛り上がるのは2010年以降です。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK