<ブギウギ ・ブギの女王編>20週~24週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第113回のレビュー
昭和30年(1955年)。愛子(このか)、8歳。
愛子に友達がいないことを心配したスズ子(趣里)は、豪邸で盛大な誕生パーティーを催します。
人はたくさん集まって大盛況ですが、愛子がむすっとしています。
結局、近所の子に、からかわれる始末。
有名人を鼻にかけているように思われてしまって逆効果でありました。東京で母譲りの大阪弁を使っているのもからかわれる要因です。
さらに、誕生会の記事を鮫島(みのすけ)が記事に書きたて揶揄します。鮫島、まだいた。トミ(小雪)の葬儀には取材に来なかったのに。
スズ子は父がいない分をなんとか埋めたいと思い、大野(木野花)からもう少し放っておいてもいいのではないかと助言されても、ピンと来ません。
スズ子が愛子を思えば思うほど、距離が開いていくようで……。
悩んだすえ、羽鳥家に相談に行きますが、やっぱり他人はそれぞれ好き勝手言うばかりで、スズ子の悩みは解決しないのです。
昔の愛子はかわいかったとスズ子は落ち込みます。
え、そんなにかわいかった? わりとわがままだった記憶なのですが……。いや、幼い頃の愛子は母にべったりで、離れるのを嫌がっていたので、それがかわいかったのでしょう。いまは離れていくばかりで、それがスズ子には気がかり。
「ブギウギ」では一貫して、娘を独り占めしたい母の気持ちを描き続けています。
はじまりは、ツヤ(水川あさみ)です。たまたま預かったスズ子を実母に返さずに自分の子供にしてしまいました。ツヤは最期までスズ子に執着し続けました。それが強い愛となってスズ子は大切にされ、すくすくのびのび自由に育ったのです。
スズ子にとって母の教師はツヤですから、その溺愛を体で学んでしまっているので、べったりすることしか思いつかないのでしょう。大阪の花田家の場合、軽みのある梅吉(柳葉敏郎)がいたので、ツヤの重たい愛情を緩和していました。
親がうっとおしいと思うこともなく、毎日楽しく生活できたスズ子。幸せだったんですね、と大野は言います。そう、スズ子はとても恵まれた環境で育ったのです。
いまのスズ子にはバランスをとってくれる夫がいない。が、その分、大野やタケシ(三浦獠太)が別の価値観を持ち込んでくれているはずなのですが……。
それにしてもスズ子は人の言うことを聞きません。何か言われると必ず「いや……」と反論します。趣里さんの演技で、いやな感じには見えないのですが、よくよく考えるととても自我が強い人物に描かれています。
自分を大事にするのはいいことです。けれど、他者の意見をまったく聞かないのはどうなのか。道徳的な主人公の多い朝ドラにしてはスズ子は珍しい。他人の言うことは聞かず、でもほとんど他人に助けてもらって人生が成り立っています。子供のときのスズ子はそんなふうに見えず、天真爛漫でしたが、大人になって出生の秘密を知ってからこじれてしまったようです。
溺愛されて育ち、自分の思いどおりに生きながら、周囲に助けてもらえるスズ子だから、娘にもそういうふうにしか育てられない。その”砂糖漬け”のように甘い愛情は一向に愛子に伝わりません。
つまり、幼いときの愛子は危うく、愛に溺れてわがままに育ちかけたところ、ひとりで母の愛情はおかしいと気づき、親離れを目指す、賢い子供なのです。
そんなとき、花田家にあやしい電話がかかってきます。
電話の主は「娘を誘拐されたくなかったら3万円出せ」と言います。
……誘拐されたくなかったら?
その前に、家には脅迫状が届いていて「ムスメノイノチガオシカッタラ」と新聞や雑誌の切り抜きを組み合わせて書いてありますが、それをムスメこと愛子が受け取ってくしゃくしゃに丸めて捨ててしまいます。
誘拐を計画している人物は、ずいぶんとトンチンカンなようです。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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