<ブギウギ ・ブギの女王編>20週~24週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第100回のレビュー
「ブギの人気だってすぐに終わるわ」とりつ子(茨田りつ子)に指摘されたスズ子(趣里)は、あえてブギで勝負したいと、羽鳥(草彅剛)にブギの新曲を頼みます。
最初、羽鳥はブギではない曲を考えていましたが、スズ子の思いに刺激され、やっぱりブギで勝負しようと考えます。そうして、誕生するのが「ヘイヘイブギー」。「ヘイヘイ」とノリノリの羽鳥がユーモラスでした。
史実でも「東京ブギウギ」「ジャングル・ブギー」などがヒットしたあと、ブギ流行りになりました。
1948年(昭和23年)、スズ子のモデル・笠置シヅ子は前年発表した「東京ブギウギ」が大ヒットし、4月に映画「醉いどれ天使」が公開、そこで「ジャングル・ブギー」を披露。そのあと、自伝「歌う自画像」を出版。そして「ヘイヘイブギー」を発表します。そのとき、笠置は34歳でした。
自伝や、評伝などを読むと、48年が笠置ブームのピークで、そのあと、ブギを笠置のみならず、多くの歌手が歌うようになり、空前のブギブームがやってきて、やがて、ブームが終わっていきます。
笠置の自伝のまえがきには、自分の意志を離れて世間のイメージが先行してしまうことへの戸惑いのような感情が記されています。マスコミなどが書いた自分はほんとうの自分ではないというようなことも書いてありました。「ブギウギ」の鮫島(みのすけ)はここから生まれたキャラクターでしょう。
歌と踊りの、日本人離れしたパワフルさや、楽曲の陽気さから、そういう人と思われがちながら、ふだんからそんなに弾けているわけではなく、人見知りもするし、生い立ちには暗いものがあり、愛する人にも先立たれたシングルマザーという身の上。明るさの裏側の影なる部分が自伝には書いてあり、ドラマは、できるだけそちらを大事にしようと考えたのだと思われます。
だから、スターなのだから、すぐに家政婦も雇えるはずなのに、まわりに迷惑がかかっても家政婦を雇う決断ができず、2歳児を抱えて仕事をし続ける迷走したヒロインという、極端な描写に走ったのかもしれません。
でもそれもようやく終了。鮫島のウソに騙され、スズ子が人気にあぐらをかいていると思い込んでしまったりつ子が、真実を知り反省し、お詫びなのか、家政婦・大野晶子(木野花)を紹介します。
りつ子と同郷の東北の人、大野。この人によって、スズ子の生活が一変しそう?
第100回で最も印象に残ったのは、りつ子のセリフ。
「あんたら人気商売だろう 話題にもあがらなくなったら終わりですよ」と鮫島に憎まれ口をたたかれたりつ子が返した言葉がこれ。
「上等じゃない。人気が欲しくて歌ってるわけじゃない。客なんてひとりでもいいのよ。たったひとりでも一生忘れられない歌、聞かせてあげるわ」
(りつ子)
茨田りつ子の歌への想いが現れていました。人気やお金が欲しくて歌っているわけではない。
戦争中の彼女の態度もそうでした。彼女は、自分の信念を歌っているのです。
タナケン(生瀬勝久)もそうで、自分の芸に厳しいのは自分に厳しいことです。
では、スズ子はどうでしょう。スズ子は、自分の芸に関して論じることはまったくありません。歌の何が好きなのか、なぜブギをもっと歌いたいのか、はっきり言葉にしません。
スズ子は羽鳥にもらった「ヘイヘイブギー」を「あんたとマミーの歌やで」とただただ目の前にいる愛子(小野美音)しか見えていないのです。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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