<ちむどんどん・沖縄編>1回~25回までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第13回レビュー
歌子(上白石萌歌)が清らかな声で歌う「翼をください」の歌詞が染みます。悲しみのない大空に飛び立ちたいという切実な想いを込めた70年代のフォークソングです。
そこまではっきり描かれていませんが比嘉家は切迫しているのでしょう。働き手である父が亡くなって7年。優子(仲間由紀恵)は朝、昼、晩と働いています。さとうきび畑は売ってお金に替えたようで今では小さな畑しかありません。それでも優子ひとりでやるのは大変だと思います。
長男にもかかわらず賢秀(竜星涼)は働かずにフラフラしているだけ。風呂に入って呑気に歌ってる兄を暢子(黒島結菜)は咎めます。第12回で職場に兄の代わりに謝りに行ったときは、朗らかに振る舞っていましたが、内心、釈然としない思いを抱えていたようです。怒りは風呂の火を熱くすることで発散します。
貧しさの極地は、良子(川口春奈)の服。第12回で、友達から指摘されるほど服がぼろぼろ。穴が空いたシャツを繕って着ています。良子が堂々と美しいのと、シャツが真っ白で美しいのと繕い方も上手なので、気になりにくいですが、おしゃれしたい年頃に、新しい服が買えないのは辛いでしょう。時代は昭和。今よりは服を繕って着ている人もまだ存在していたのではないかと推測しますが……。
それにしても、小学校の頃からなぜ良子だけが体操服や私服が繕われているのだろうかと疑問に思ったとき、気づきました。本来、主人公ひとりが引き受ける不運を4人のきょうだいに分散しているのではないでしょうか。
賢秀と暢子はやりがい探し、良子は貧しさ、そして歌子は片思い。こうして悩みを分散することで、ひとりが受けるストレスを減らし、視聴者のストレスも軽くしようという工夫なのかなあと思いました。
歌子はとうふ店の砂川智(前田公輝)に小学生の頃からほのかな想いを抱きながら、彼が暢子を好きなことを感じています。
熱を出して寝ていても、ちょっと身支度して智の前に現れる歌子の乙女ごころが切ない。
歌子が熱を出したとき優子が「(医者は)日曜でも来てくれるよね」とべろんべろんに酔って帰って来た賢秀に訊ねます。子どものときから病弱なのだから、日曜日に医者が来てくれるかどうか今更心配するのもおかしな感じです。もしや、じょじょに話題になってきている、時々出てくるセリフのない、オーバーオールの人物は何者なのか? というような視聴者のツッコミどころとして作られたセリフなのでしょうか。あるいは、賢秀にも簡単に答えられるような質問を、優子が気を使ってしているのかもしれません。
ほんとうは比嘉家は和やかそうに見えて、いつ家庭崩壊してもおかしくない切羽詰まった状況なのでしょう。
畑で芋をもって立ち尽くす暢子が絵になっていました。
※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。
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