<らんまん・高知編>1週~5週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第17回のレビュー
万太郎(神木隆之介)が無理して植物研究を諦めたことを心配した竹雄(志尊淳)が、タキ(松坂慶子)に事情を話します。万太郎がそれほど苦しんでいること、植物研究への思いの強さを思い知ったタキは大きな決断をします。
タキが万太郎の部屋を探るときのおもちゃのピアノみたいな劇伴がよかったです。
綾(佐久間由衣)と万太郎を結婚させようと言いだすタキに、ふたりとも呆然。
実は綾はタキの娘の子供で、万太郎とは従姉。コロリで綾の母が亡くなったため引き取り、育てていたと明かします。
タキにしてみれば、植物研究を諦めきれない万太郎と、酒づくりに興味のある綾が結婚すれば、峰屋を継ぎながら、お互い興味のあることをやっていける名案だったわけですが、これまで姉弟として育ってきたふたりには夫婦になるなんて考えられません。
「私らにも心がありますき」タイミングも悪く、綾は好きな人がいるし、万太郎も東京でときめきを知ったばかり。
(綾)
「おまんらはいびつながじゃ」いびつ、とはなかなかのパワーワードです。
(タキ)
祝言は夏に行うと有無を言わさず決めてしまうタキ。
感情が昂ぶって出て行ってしまう綾。
万太郎は、案外、しっかりしていて、タキを窘めます。
しっかり…というよりはすっかり諦めてしまったようで、
「どうせわしは当主じゃ」と捨て鉢になります。
(万太郎)
神木隆之介さんが万太郎でよかったと思った場面です。
少年のような雰囲気もありながら、自分の宿命に縛られ、好きなことへの未練を捨てきれず、でも、祖母には丁寧に接し……と様々な事情と感情が波打ち際の波のようにうごめいている様子をみごとに表現しています。少年俳優ではできないし、ある程度大人になった俳優にも少年ぽさが出せないしで、神木さんだからできるのだと感じます。
さらに、そこに万太郎の天才性も見せないといけません。何か先が見えているような鋭い確かな眼差し。ただの植物バカの放蕩息子ではない、知性のある万太郎という人物がよくわかる場面でした。
万太郎は、竹雄の気持ちも慮り、今こそ綾に告白しろと言います。
でも、竹雄は綾の気持ちも知っているし、自分の立場(使用人)もわきまえているので、できるわけもありません。
万太郎、綾、竹雄、タキ 全員が自分の立場に苦しんでいます。タキは女性の立場が弱いことをもうずっと耐えてきた人物です。それが当たり前と思っていて変わることができないから若者にも強いてしまいますが、決して悪意ではないのです。
タキも、タキに万太郎の話をした竹雄も、みんなよかれと思って動いたことが、悲しい方向に転がっていくようで、何もしないで耐えていたら変わらない。こんなふうにアクションが起こることで変化が起こるのです。
心よりしきたりを大事にしてきた時代から、心を優先する時代へーー
令和の今も女性の立場が弱いとはいえ、明治以前と比べたらずいぶんマシになっているんですね。
100年後はもっと誰もが生きやすい世界になっていますように。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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